大林宣彦、関根潤三、C・W・ニコル、秋山祐徳太子、ジョン・ホートン・コンウェイ

蓋棺録

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偉大な業績を残し、世を去った5名の人生を振り返る追悼コラム。

★大林宣彦

 映画監督の大林宣彦は(おおばやしのぶひこ)CM界で活躍して鬼才と評され、少女たちが主人公の映画を撮って爆発的な人気を博した。

 1977(昭和52)年公開の『HOUSE/ハウス』は異例だらけだった。老婆が化身した「家」が少女たちを喰うという奇譚で、映像がコミカル、そして監督は商業映画を撮るのが初めてだった。それなのに大ヒットして配給会社が驚いたという。

 38年、広島県尾道市に生まれる。実家は代々続く医者一族。2歳から映画に関心を示し、高校生のころには父がくれた8ミリカメラで映画を撮り始める。医学部に入るはずだったが、放棄して成城大学文芸学部に入学した。

 大学では毎日のように講堂のピアノを弾いて、集まってきた女子学生に出演を依頼し自主映画を製作する。このとき出演してもらった恭子と結婚したが、後に、大林宣彦事務所の代表取締役を務めてもらうことになった。

 学業はそっちのけでCM製作に参加し、ほどなく第1線で活躍するようになる。チャールズ・ブロンソンの「うーん、マンダム」やソフィア・ローレンの「ラッタッタ」など、外国有名人のセリフが印象的なCMが注目を集めた。

 当時、仕事で組んだのが、広告会社社員でイラストレーターの小田桐昭だった。あるときカレーのCMの依頼人が「まずい製品だけど、旨そうに撮ってくれ」と言って勝手にカメラを覗くので、「出ていけ」と怒鳴ってもめた。小田桐は「私は大林君を守る。あんたが下りてくれ」と依頼人を追い出したという。

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source : 文藝春秋 2020年6月号

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