内向きの政治
本誌3月特別号の保阪正康氏による『自壊する「日本型エリート」』を拝読し、戦前と戦後のエリートの違いを私なりに考えてみた。
戦前の軍人エリートは、天皇に忠誠を誓いながら、実は好き勝手に振る舞っていた。一方、戦後のエリート官僚は、「国民全体の奉仕者」の体を装いながら、政治家に奉仕してきた。
近年は政治主導の名のもとに「官邸主導」が大手を振る。以前は各省庁に任されていた政策も、官邸の関与なしには動かず、幹部官僚の人事も官邸が握る。官邸の意向が官僚の判断基準となる。首相の答弁に合わせて、公文書を改ざんしたり、廃棄したり、都合の悪いことは、記憶にないとしらを切ったりする。国民より首相や官邸への奉仕で頭がいっぱいだ。内向きと言うほかない。
だが、内向きは官僚に限らない。官邸の主自身がそうなのだ。オープンな議論を好まない態度が、様々な問題を呼んでいる。
東京高検検事長の定年延長もその例である。検事総長を除く検察官は、年齢が63歳に達した時に退官する旨、検察庁法が定める定年を、国家公務員法の適用で延長の閣議決定をした。検察官に国公法は適用しないという、従前の政府見解を指摘されると、首相は解釈の変更だと言い出した。過去の記録も調べず、結論ありきの決定だったことが露呈した。
行政府の長なら何をやってもいいと思い込んでいるのだろうか。もしそうだとしたら、国の舵取りに大きな不安を覚える。(千葉幸則)
男性の育休
3月号に掲載された西尾市長・中村健氏による『西尾市長の「夜だけ育休」日記』を読みました。
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source : 文藝春秋 2020年4月号