自民党を手玉に取る策士の「凄みと危うさ」
「今朝報道されたことにつきましては、おおむね事実です。(中略)正直浮かれた部分があったと思います。冷静さを失った行動だったと反省しています」
11月11日9時30分、特別国会が開かれる直前。国民民主党代表の玉木雄一郎(55)は緊急記者会見を開き、釈明した。同日朝「FLASH」が報じた不倫疑惑。玉木は即座に事実関係を認め、時に目を赤くしながら謝罪の言葉を口にした。
醜聞報道は、2週間前の衆院選での躍進をかき消す可能性もあった。
だが、ネットではこの種の報道としては珍しい現象が起きた。ライブ配信をしていたYouTubeのコメント欄で、非難より応援する声のほうが多かったのだ。
「頑張れ玉木!」「素直だな、タマキン」「グラドルと不倫はダサい」
同じ現象はヤフーニュースのコメント欄でも起きていた。こちらでは財務省による玉木潰しという陰謀論めいた見立てが数多く書き込まれていた。玉木雄一郎という人間がそれだけネットで信頼を勝ち得ている証左でもあった。
その騒動から9日後の20日、自民・公明・国民民主の政調会長、税調会長は、所得税「103万円の壁」の見直し、引き上げに合意した。これは国民民主が掲げていた目玉政策で、玉木が「まったく譲る気はない」と強調していたものだ。30年近く同じだった基礎控除などの額を引き上げるという合意。その夜、玉木は自身のYouTubeチャンネルで「大きな山が少し動いた」と喜びながら解説した。
10月27日の衆院選。玉木率いる国民民主は解散前の7議席から28議席へと議席を4倍にし、一夜にして永田町の主役に躍り出た。過半数を割った自民・公明の政権与党が他党の力を頼らざるをえなくなったためだ。日本維新の会は38議席を有するが、公明との関係が悪く与党は連携できない。そこで国民民主の存在感が一気に高まった。
一方、国民民主は独自の立場を打ち出した。玉木は開票後早々、与党には入らないと明言。かといって野党とも連携しない。各党と等距離を保ち、政策単位で判断すると中立を宣言した。国会はハング・パーラメント(宙吊り議会)となった。
この国民民主のスタンスを歓迎する人もいれば当惑する人もいる。与党にも野党にもつくことができるキャスティングボートを握るポジション。特異な状況だが、そんな玉木に対してネットの応援は続いている。
なぜ玉木雄一郎は選挙で勝ったのか。また、この状況下で玉木はどんな政治を目指そうとしているのか。
推し活のような女性ファン
瀬戸内海に隣接する香川県高松市のうどん店「ひさ枝」。店主の久枝了はこの2年ほど訪れる客の行動に驚いていると言う。
「聖地巡礼いうんですかね。若い女性のお客さんが数人で来て、壁にある玉木のサインと一緒に写真撮ったりしてるんです。アクスタまで持ってきている子もいます」
アクスタとはアクリルスタンドのことで、10センチほどのアクリル板に写真を印刷し台座に立てるグッズだ。アイドルのコンサートでよく販売されるものだが、そうしたグッズの一つに玉木のものもあるという。
久枝は玉木の高松高校時代の同級生で、玉木の動画でも紹介されてきた。そのため玉木のファンが高松を訪れた際、久枝の店に寄るのだという。客は東京や北海道など各地から足を運ぶ。久枝も一緒に撮ってと言われるのは不思議な感覚だと笑う。
「高松での政治資金パーティに参加しに来たりね。玉木の思い出話を聞かれたり。政治家の支持者というより、ファンとか推し活みたいな感じなんですよね」
そんな動向は数年前からだが、この数ヶ月ははっきり感じるという。
「だいたい20代前半で8割は女性。みんな動画で知って、玉木ファンが増えてきた印象ですね」
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