著名人が父親との思い出を回顧します。今回の語り手は、藤原さくらさん(シンガーソングライター)です。
父はわたしの友達のような存在だ。
最近は、わたしが昔オリコン5位をもらった時にスタッフがプレゼントしてくれたシャネルの5番を実家で発見して、時々纏ってみているらしい。そんなマリリン・モンローみたいな良い匂いのおじさんは、福岡の片田舎に必要ない。
父は、幼少期のわたしに音楽や映画などの知識を山盛り与えてきたおじさんで、かつてはベーシストとしてプロを目指し上京していたこともある。
そして、今でも地元の福岡でわたしよりも多いライヴの本数をこなしている。
好きな音楽が似ていることもあって、帰省した際には父の車の助手席に座り、最近自分が好きなアーティストの曲を流して聞かせたりもする。
というか、音楽に関わらずわたしの趣味嗜好や、おじさん達と何ら壁を感じずに良好な関係を築ける能力は、完全に父譲りと言っていい。
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source : 文藝春秋 2025年1月号