月刊「文藝春秋」の名物政治コラム「赤坂太郎」。絶大な支持率を背景に、参院選へと突き進む安倍政権に死角はあるのか。
「この3年間で著しく損なわれた日米の絆と信頼を取り戻し、緊密な日米同盟が完全に復活したと、自信を持って宣言したい」
現地時間の2月22日、ワシントンで開かれた日米首脳会談後の記者会見。首相・安倍晋三は、誇らしげに会談の成果を語った。昨年末の第二次安倍内閣発足以来、訪米時期を探ってきた安倍にとって、待望の晴れ舞台。米シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)で行った講演では「I am back(私は返り咲いた)。日本もそうならなくては」とジョークを飛ばし、大受けした。
しかし、首相として6年ぶりの訪米に浮き立つ安倍を迎えた米大統領オバマの態度は、極めてビジネスライクなものだった。オバマが「日本の総理」と会うのは就任以来、実に5人目ということになる。オバマは歓迎のあいさつもそこそこに「いろいろ話したいことがあるでしょう。あなたの話を聞きたい」と本題に入った。安倍は、約20分間にわたり、得意の外交や安全保障分野に関する日本の関心事項を滔々と語り、途中、駐米日本大使の佐々江賢一郎から、(いったん打ち切って大統領に話をさせてください)というメモが入るほどだった。内容が多岐に渡ったため通訳が「(中国に対しては)冷静な対応をする」という安倍の言葉を訳し忘れると、安倍が「ちゃんと訳してください」と注意を促す一幕もあった。
昼食協議が始まる際、オバマへの手土産としたゴルフのパターが話題になると、安倍はオバマのキャッチフレーズを引き合いに出しながら、「Get in the hole. Yes,we can(カップに入れろ。我々ならできる)」と話しかけ、オバマをほほ笑ませた。昼食協議ではいよいよ環太平洋連携協定(TPP)交渉に関する日本の立場が問題となった。
「TPPは逃げちゃいけない。でも、参院選前は難しいよね」。安倍は訪米前、交渉参加の決断時期に迷いも見せていた。日本が関税を撤廃したことのない農産品は約850品目。たとえコメなど主要品目を関税撤廃の対象から外せたとしても、他の幅広い品目が「無傷」で残ることはあり得ない。
結局、会談後に発表された共同声明では「あらかじめすべての関税撤廃を前提としない」との文言が盛り込まれた。
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source : 文藝春秋 2013年4月号