囲碁との出会いは5歳。父が買ったスーパーファミコンの囲碁ソフトで一緒に遊んでいた。
「囲碁初心者の父と競い合い、半年で追い抜いたそうです。それからアマチュア六段だった父方の祖父と対局するように。難しいと思われがちな囲碁ですがルールは非常にシンプル。真っ白なキャンバスに絵を描くように、それぞれの個性を発揮しながら2人で自由に対局を作り上げる魅力を感じていたように思います」
母には「昔から1つのことに没頭するタイプだった」と言われる。
「囲碁の前は大相撲に夢中。漢字も読めないのに四股名をすべて覚えていたそうです。ただ、負けて涙を流すほど熱中したのは囲碁だけでした」
小学3年生でプロ養成機関の日本棋院生となり、12歳でプロ入り。高校には進学せず、囲碁一筋を貫くなど、幼くして大きな決断を経験した。
「ただただ好きで続けていた囲碁を職業にする不安は勿論ありましたが『悔いのないようにやってみたい』という思いが断然強かった。『自分で決めたのだったら』と応援してくれた両親には感謝しかありません」
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source : 文藝春秋 2023年7月号