■コンセプト
2023年10月1日、消費税の仕入税額控除の方式として「インボイス制度」が施行開始となる。万全な対策を取っている企業、対応の最終段階を迎えている企業がある一方で、まだまだ対策が不完全という企業も少なくないのが現状だ。
「インボイス制度」では、インボイスの発行義務や申告・納税義務、税務調査に耐えうる経理業務など業務量が格段に増え、運用コストも嵩むことが想定されている。また、免税事業者などでは、今まで内部に留保されていた消費税分に係る取引金額などの見直しがされることもあり、利益率や資金繰りに影響を及ぼすことも考慮する必要がある。
「消費税額」「消費税率」を正確に把握することでより透明性の高い取引が実現する一方で、業務負担増やコスト増といった「課題」に対して業務フローの見直しやデジタルツールの活用、自動化、省力化など「対策」も併せて講じていかなければならない。
施行期日が迫る中、企業は改めて対応に不備はないか最終点検を行い、経理業務のみにとどまらず業務プロセス全体を俯瞰し、自動化や効率化を図るとともに、不正防止や経営データとして活用するための体制・組織づくりに向けロードマップを描くことが重要となっている。
本カンファレンスでは「インボイス制度-最終点検」をテーマに、業務負担増やコスト増への対策、持続的な経理業務の効率化に向けたロードマップについて専門家、プロフェッショナル、当事者の講演を通じ実践形式で考察した。
■基調講演(1)(制度の最終点検)
『インボイス制度』-対策と実務の最終点検
~ 社内外の周知とスムースな制度適応に不可欠なこと ~
中央大学法科大学院 教授
酒井 克彦氏
1963年2月東京都生まれ。中央大学大学院法学研究科博士後期課程修了。博士(法学)。中央大学商学部教授を経て、中央大学法科大学院教授。現在、租税法などを担当。その他、中央大学大学院商学研究科、税務大学校などでも教鞭をとる。一般社団法人アコード租税総合研究所 所長、一般社団法人ファルクラム 代表理事。
◎社内周知~インボイス制度の理解(前提再確認)
・令和5年(2023年)10月1日から、消費税の仕入税額控除の方式として適格請求書(インボイス)制度が導入。
・課税事業者は、インボイスの発行と、自ら発行したインボイスの写しの保存が義務づけられることになる。
・消費税の仕入税額控除は、課税事業者が発行するインボイスに記載された税額のみとなる。
・免税事業者は、インボイスを発行できない。⇒免税事業者からの購入やサービスに対価を支払っても、仕入税額控除ができないことになるため、取引が断られることもあり得る。
・免税事業者でも「適格請求書発行事業者」になれば、インボイスを発行することができる。⇒登録申請書を提出し、登録を受ける必要がある。
仕入税額控除方式には、(1)インボイス方式(税額票方式)と、(2)帳簿方式(アカウント方式)がある。インボイス=適格請求書とは、売手が買手に対して、正確な適用税率や消費税額等を伝えるもので、具体的には、現行の「区分記載請求書」に「登録番号」「適用税率」及び「消費税額等」の記載が追加された書類やデータをいう。
売手である登録事業者は、買手である取引相手(課税事業者)から求められたときは、インボイスを交付しなければならない。また、交付したインボイスの写しを保存しておく必要がある。
買手は、仕入税額控除の適用を受けるために、原則として、取引相手(売手)である登録事業者から交付を受けたインボイスの保存等が必要となる。なお、買手は、自らが作成した仕入明細書等のうち、一定の事項(インボイスに記載が必要な事項)が記載され取引相手の確認を受けたものを保存することで、仕入税額控除の適用を受けることもできる。
税務当局は、買手側が申告する仕入税額を売手側が発行したインボイスに記載された売上税額と照らし合わすことができる⇒税務当局によるクロスチェック
インボイス制度は、透明性が高く自己制御性(セルフエンフォーシング)が働くため、課税の適正化に資する制度である。
企業は、取引先が課税事業者であるか、「適格請求書」を出してくれるか、出す態勢が整っているかを確認する必要がある。既に、国税庁のホームページでは課税事業者の登録番号が確認できるようになっている。適格請求書発行事業者には、適格請求書の交付/適格返還請求書の交付/修正した適格請求書の交付/写しの保存、といった義務が課される。なお企業は、インボイスの交付ができない非課税事業者との今後の取引をどうするか、を検討しておくことも必要になる。
◎社外周知~登録申請手続き、取引先との確認事項
インボイス制度の開始に伴い事業者が適格請求書(インボイス)を交付するためには、納税地を所轄する税務署長に対して登録申請書を提出し適格請求書発行事業者になる必要がある。税務署における審査を経て、適格請求書発行事業者として登録された場合、「登録通知書」(登録番号や公表情報等が記載されている)が送付される。登録申請は、申請書の作成⇒税務署に提出⇒取引先へ通知、の3つのステップで進める。
法人税法22条の2には「内国法人の資産の販売若しくは譲渡又は役務の提供に係る収益の額は、その資産の販売等に係る目的物の引き渡し又は役務の提供の日の属する事業年度の所得金額の計算上、益金の額に算入する。」とある(一部を略した抜粋)。
インボイス制度開始以前は、各法人が行っていた慣行(出荷基準・発送基準など)に従って売上・仕入計上の処理をしていた。しかし、業種業態や商品・サービスにもよるが今後は、法律・通達や過去の判例(例・大竹貿易事件最高裁判決)に留意しつつ、取引当事者双方が取引内容(の担保)を確認してから売上・仕入計上する、いわゆる「検収基準」の採用も、取引先と検討・確認することが必要になってくるかもしれない。
インボイス制度の要諦は取引当事者双方の税務のクロスチェックにある。制度開始後は、返品や割引、販売奨励費、振込手数料などが発生する取引については「返還インボイス」を発行しなければならない。以前は、売上側は発送時に売上計上、買手側は荷物が着いた時に仕入計上する例が多かったが、今後は商品が検収され双方で内容が確認されてからの計上、つまり検収基準となることが増えるだろう。取引先とは、税務調査時のリスク回避のためにまず取引の内容、進め方を相手と確認し、場合によっては覚書や確認書を作ることが必要になってくるかもしれない。
◎周知一般問題
インボイス制度については、いまだメリットが一般の国民にダイレクトに伝わっていない嫌いがある。また、デメリットも適切に認知されているか不安が残る。国民(納税者)の間には、マイナンバー制度や電子帳簿保存法の電子取引についての“(救済がある、何とかなるという)悪い成功体験”もある。
3年間の「課税事業者の納税額に関する2割特例」などの経過処置はあるものの、あらゆるチャネルを活用した広報活動(オンライン説明会/キャンペーンなど)やメリット・デメリットの明確な伝達、関係民間団体やマスコミとの協調体制構築などを行っていくべきだ。
■課題解決講演(1)
インボイス制度対応フロー再点検の「すすめ」
業務効率化の成否を分ける適格請求書受領
Sansan株式会社
Bill One事業部 マーケティング部
對馬 睦氏
大学卒業後、広告代理店に入社し、国内外のクライアントに向けた展示会や商品発表会などの企画提案を行う。その後、人材系企業を経てSansan株式会社へ入社。インボイス管理サービス「Bill One」の立ち上げ当初からマーケティング業務に携わり、現在は経理・財務の領域における業務改革やペーパーレス化を推進するためのコンテンツの企画・制作に従事している。
2023年10月に開始予定のインボイス制度の目的は、取引における消費税などの流れを明確にし、消費税の適正な納付を図ること。課税事業者に対して、適格請求書の発行が求められる。
※以下、基調講演と重複するインボイス制度自体の詳細については本稿では一部割愛
自社でインボイス制度に対応する場合には、(1)フォーマットに沿った適格請求書の作成・発行 (2)控えの保存・管理、という2つの業務が生じる。(1)適格請求書には、登録番号/軽減税率の対象/消費税額、又は税抜き金額、を確認の上、記載する必要がある。(2)控えの保管については、人為コスト(修正対応関連)や環境コスト(保管関連)が発生することが考えられる。したがって、適格請求書の管理に関するルール設計と遵守について全社で対応が必要だ。
適格請求書の「発行」業務とともに「受領」業務への対応も確認したい。受領の際には(1)適格請求書の条件を満たしているかを確認 (2)税率ごとの区分に応じて消費税額を検算、の2つの業務が発生する。
例えば、消費税の端数処理は一つの適格請求書につき税率ごとに1回行う、とされている(商品ごとに端数処理しその合計額を記載するといった方法は認められていない)。請求書を受領した際は税込金額の計算が正しく処理されているか確認することが必要だ。また、請求書に記載された金額そのものが正しいか検算する必要もある。当社の調査では電卓を使う場合、あるいはExcelやシステムなどを使う場合でも、請求書100枚あたり約1時間の確認業務が発生することが判明した。すなわち、対策を講じなければ、この対応が経理業務をひっ迫する恐れがある。営業などの現場が対応する場合、経理が対応する場合、どちらが対応する場合でも工数の負担は大きい。
請求書受領から、月次決算を加速する「Bill One」は、インボイス管理サービスへとさらに進化する。請求書の受領のみならず、請求書を発行・送付できる機能も実装。仕入明細書の発行にも順次対応。あらゆる取引先へ仕入明細を一括発行でき、オンライン上で同意確認の取得も可能だ。
発行側ではBill One上で適格請求書のフォーマットに沿って、紙・電子両方の適格請求書を発行し、控えの電子保存(電子帳簿保存法対応)ができる。紙・電子両方の適格請求書を発行し、控えの電子保存(電子帳簿保存法対応)ができる。受領側では、あらゆる請求書の登録番号と消費税率を正確にデータ化し、請求書記載の事業者情報と国税庁の情報を照合し、会計システムと連携して適切な税率での会計処理を可能にする。
Bill Oneではシステムへのアップロード、メール添付、郵送、いずれの方法でも請求書の受領と発行が可能だ。取引先に負担を強いることなく、自社の請求書業務を効率化することでDXを加速する。Bill Oneは経理部門だけでなく、組織全体がメリットを享受できるツールだ。
最後にBill Oneが選ばれる理由を3つ紹介したい。
(1)利用者にメリットがある設計になっている。
2)サービスが運用・定着する仕組みがある。
(3)提供会社やサービスに安定性・安全性がある。
Bill Oneで請求書業務の効率化と法改正への対応の両方を実現できる。
■基調講演(2)(実務の最終点検)
インボイス制度の対応においての疑問を解決
~電子インボイスで対応する場合の検討のポイント~
SKJ総合税理士事務所 所長 税理士
袖山 喜久造氏
国税庁、東京国税局おいて長年大企業の法人税調査等を担当。在職中電子帳簿保存法担当の情報技術専門官を歴任。平成24年11月SKJ総合税理士事務所を開設。令和元年5月SKJコンサルティング合同会社を設立。税務コンサルティングのほか、企業の電子帳簿保存法に対応した電子化コンサルティングを行っている。
※基調講演ほかと重複するインボイス制度の解説については本稿では一部割愛。以下の項目について、オリジナルのスライド資料と共に袖山氏から解説がなされた。
◎消費税インボイス制度の概要
・インボイス制度の納付消費税の計算方法
インボイス制度では、消費税申告においての仕入税額控除の仕組みが変更され、2023年10月1日以降の課税仕入れについては、適格請求書の保存が仕入税額控除の新たな要件となります。2029年9月30日までの間については、免税事業者等への支払いについては、一定の割合で仕入税額控除が可能となる経過措置が適用可能です。
消費税納税の仕組み
消費税は消費者が支払った消費税を、事業者が預かり納税するいわゆる税の負担者と納税義務者が異なる間接税に分類されます。事業者は課税期間中に支払った消費税については税額控除ができますが、免税事業者等との取引に係る消費税相当分を税額控除できることとすると当該税額控除分については納税されないことになります。これを是正し、適格請求書発行事業者への支払いのみを仕入税額控除できることとしたのがインボイス制度です。
適格請求書の発行側・受領側の検討
インボイス制度の対応の検討では、事業者は、売り手(インボイス発行)側と、買い手(インボイス受領)側と両面からの検討が必要となります。(検討項目についてはセミナー資料「適格請求書の発行側・受領側の検討」)
適格請求書発行時業者の義務
仕入税額控除の要件と検討項目
・社内電子化のイメージ
企業の電子化の検討では、(1)業務処理の電子化、(2)証憑保存の電子化、(3)取引書類の授受方法の電子化、の3つの検討を行う必要がある。
特に重要な書類である請求書や領収書の保存ではデータによる一元管理をする方法を検討が必要。業務DX化の検討では、承認処理等ができるワークフローシステム、文書保存機能や会計システムへの自動仕訳連携ができるソリューションの選定に加え、データによる業務管理を行うことによるガバナンス向上を行う検討することも重要。クラウドサービスなどを活用したデータによる取引書類の授受を行うことにより発行業務や受領業務の効率化が期待される。
さらにインボイス制度対応では、標準化されたデジタルインボイス(JP PINT)を利用することによる経理業務のDX化も期待される。Peppol対応しているシステムを選定することもポイントとなる。
電子帳簿保存法(電帳法)の法令対応もインボイス制度の対応の検討と並行して行なうことが必要だ。ただ、電子取引データの保存については令和5年度の改正により出力書面による保存方法も認められ、2024年1月以降でも、電帳法の法令対応ができない場合には、当面は出力書面とデータを保存することで対応が可能となるので、来年以降データによる保存の検討を行うこともできる。
まずは、適格請求書の発行を行うことの検討が最優先となる。発行方法の検討では、できるだけクラウドを活用した電子インボイスの発行方法の検討を行い発行業務の効率化などを検討しておく。受領側では、インボイスはできるだけデータで受領し、データを活用した経理業務のデジタル(DX)化の検討を行うことが必要。キーワードは「データの活用」だ。インボイス制度の対応において、データ活用ができる多様な製品がリリースされており、このようなシステムを活用しながら、最終的には業務全体のDX化を目指し、段階的にデジタル社会に対応していってほしい。
■課題解決講演(2)
インボイス制度、具体的なシーン別対応方法と
コンカーを活用した制度対策を徹底解説!
株式会社コンカー
デジタルエコシステム本部 パートナー事業開発部 部長
川縁 啓介氏
2008年、法政大学経済学部卒業。 同年、日本ヒューレット・パッカード株式会社に入社。HPソフトウェア事業統括本部でソリューション営業として主に大手金融機関を担当。IT運用管理の改善プロジェクト等に従事。 14年、株式会社コンカーに入社。エンタープライズ営業部にて大手製造業に対する間接費管理の改革やグローバル展開等を担当。19年からコマーシャル営業本部の部長として中堅中小企業向け営業部門を統括。22年1月から、現職。
米国発祥で、全世界で16兆円を超える経費を処理しているConcur(コンカー)。SaaS型国内経費精算ベンダーとして日本でも8年連続経費精算市場にて売上トップシェアを獲得している。国内での電子帳簿保存法対応企業は、1500社以上である。
今、企業は、国・企業・個人単位の生産性改善という経済的要請と、withコロナ時代の新しい生活様式という社会的要請により、非接触型社会・デジタル社会への対応、接触型業務=アナログ業務からの脱却を迫られている。
DXは待ったなしだ。多々あるバックオフィス業務のうちどこから手をつけるか? 答えは、利用者が多く利用頻度が高く、変化の幅が大きく、スピード感が必要で短期間に効果が出る「経理(間接費)」業務から、である。経費精算はビジネスパーソンにとって最も付加価値のない仕事だ。コンカーのビジョンは「経費精算のない世界をつくる」である。
コンカーは、デジタル決済や電子帳簿保存法改正、領収書光学(OCR)読み取りに対応。キャッシュレス/入力レス/ペーパーレス/承認レス、のすべてを実現する。
◎買い手側企業が必要な対応
2023年10月からインボイス制度が開始される。制度に則った会計処理と、登録番号と適用税率&税率毎の消費税額を追記した「適格請求書」を受領し保管する必要が生じる。具体的にはインボイス受領⇒支払い精算書とインボイスを添付して提出⇒上長承認⇒経理承認⇒集計⇒帳簿記載、だ。アナログな業務プロセスの場合は、事務作業の負担が増え、経理側にしわ寄せが発生すると予測される。
大きな課題は、(1)集計・帳簿記載段階で、課税/免税等の条件による仕訳・帳簿への記載が複雑化することと、(2)インボイスの受領チェック・保管業務が複雑化し、万一の監査への備えも考慮する必要があることだ。
対応策として、速やかなデータ化・仕訳自動連携・インボイスの電子保管を行いたい。社内経費規定の再整備を行い、コンカーなどを導入して簡単で速やかにデータ化が可能な環境を創り/電帳法に対応できる仕組みを構築し、集計・仕訳起票を自動化できるデジタル化の推進やインボイス制度による自社影響を冷静に客観視(可視化)できる組織体制を作る、以上が肝要だ。
◎具体的に従業員とバックオフィス社員に求められる対応
先述したように、インボイス制度導入に向けて、従業員への運用指導としては「経費規定を再整備しアナウンス」「システム活用したガイダンス」を行いたい。コンカーのシステム活用例で言えば、請求書に記載の情報をAI OCRで読み取り、登録番号の存在チェックも(自動で)行い、経理or経理+申請者へアラート表示することが可能だ。
バックオフィスの仕組み整備としては「要件に従った帳票の起票」「適格インボイスの電子保存」「インボイス制度の影響を可視化」を行うべきだ。コンカーなら、要件に従った帳簿の起票として、登録番号や税区分を含む会計ファイルを“Bridge Program”へ連携し、必要に応じて税額計算などを行い、会計システムへ連携することができる。また、適格インボイスの電子保存においては、コンカーでは電子保存はもちろん、適格か否かに関わらず電子帳簿保存法の運用ノウハウを生かした提案が可能だ。
インボイス制度による影響の可視化、については、コンカーは特に力を入れている。例えば「仕入れ先ごとの控除税額の目安」と「推移」を客観視できるレポート作成で次の検討アクションにつなげることが可能となる。課税事業者、免税事業者それぞれへの対応や請求書処理が適切に行われているかどうかを、的確に確認することもできる。
インボイス制度の法的対応を行うことがゴールではない。どんな従業員でも適切な対応ができる仕組みを構築し、その下で規定再整備/ガイダンス/会計自動連携を行う。また、電子帳簿保存法への対応と自社インパクトの客観視を行う――これらが要諦である。
■課題解決講演(3)
受取請求書は対策済み?
~システムの導入でインボイス制度対応に追われない経理に~
株式会社TOKIUM
ビジネス本部マーケティング部 Eventチームリーダー
細貝 美佑氏
2020年にTOKIUMに参画。インサイドセールスとして活動後、支出管理クラウド「TOKIUM」のマーケティング業務に携わり、現在はWEBセミナーやオフライン展示会の統括を行っている。
法人の支出管理業務の効率化・最適化を支援するTOKIUMでは、「TOKIUM経費精算」「TOKIUMインボイス」「TOKIUM電子帳簿保存」などのクラウドサービスを提供している。
※基調講演ほかと重複するインボイス制度の解説については本稿では一部割愛。インボイス制度の概要(変更点について)と経理業務への影響について、オリジナルのスライド資料と共に細貝氏から解説がなされた。
◎「受け取り請求書」から対応し、どのような点に注意すべきか
請求書の「送付」については、基本的に自社内での対応で完結する一方、「受取」については、取引先が多ければ多いほど、請求書の形式(紙か電子か)やフォーマットも異なるため、自社での対応のみで完結するのが困難だ。
2023年10月からは、届いた請求書が適格請求書なのかどうか、記載されている適格番号が登録されているか、を都度確認することが必要になる(消費税法=インボイス制度対応)。同年12月からは、全ての取引先が電子請求書に移行することが想定しにくく、紙受取も想定する必要がある。よって形式をどちらかに寄せないと管理が煩雑になる(電子帳簿保存法対応)。これらはいずれも受取側に求められる対応である。
「インボイス制度・電子帳簿保存法の対応」と、「運用負荷の軽減」を同時に達成可能なサービスを利用することで、「法対応と業務効率化」を同時に実現していくのが望ましい。ポイントは以下の4点。
(1) 適格請求書発行事業者登録番号に注意
(2) 免税事業者からの仕入に係る経過処置に注意
(3) 複数書類をインボイスとする場合に注意
(4) 電子帳簿保存法との相互関連性に注意
◎請求書受領クラウド「TOKIUMインボイス」とは
代行受領・データ化により、請求書受領と取りまとめ業務に対応するのが「TOKIUMインボイス」だ。どんな形式の請求書でも、受領から保管までオンライン化・ペーパーレス化が可能。システムだけでは対応できない課題は、BPO(アウトソーシング)を組み合わせることで解決し、ノンコア業務を大幅に削減する。
(1)インボイス制度で求められる「適格請求書発行時御者登録番号の確認作業」などが不要となる。
(2)請求書以外の書類も一元管理し、紐付けることで金額の突合作業などを自動化する。
TOKIUMインボイスにはこうした効用があり、「経費精算」「インボイス」「国税関係書類」どの領域からでもスタートすることができる。
当社で扱ってきた各社の業務効率化事例をもとに、最適なスケジュールを提案できるので、インボイス制度導入に間に合わせるために、また、今後の業務効率化をも視野に入れてTOKIUMインボイスの導入をご検討いただきたい。
■特別講演(経理DX)
インボイス、改正電帳法対応で加速する経理DX
~インボイス制度対応から始める“失敗しない”経理部門のデジタル化~
『経理DXのトリセツ』著者
株式会社 経理がよくなる 代表・税理士
児玉 尚彦氏
企業の税務会計顧問の他、経理業務の効率化、財務体質の改善、経理人材の育成などを中心に活動 講師を務める「経理財務セミナー」には10,000社以上が受講し多数の経理社員のスキルアップを支援 経理業務の生産性向上を目的に経理のデジタル化コンサルティングの実績が豊富 管理会計やキャッシュフローの改善に重点を置いた経営支援や企業研修なども実施。
※基調講演ほかと重複するインボイス制度の解説については本稿では一部割愛。消費税インボイス制度で変わる経理業務、請求書/領収書の消費税区分判定と会計処理などについて、オリジナルのスライド資料と共に児玉氏から解説がなされた。
デジタル経理なら、インボイス登録番号は自動処理されるため、煩雑な確認作業の負担がない。(1)領収書をAI-OCRスキャンしアップロード (2)登録番号をWeb-APIを利用し自動検索 (3)登録番号をWeb照会後に会計仕訳を自動生成、といった流れだ。ただし、クラウドサービス・システムと社内システムのデータ連動のための機能や設定などの確認は入念に行う必要がある。
請求書受取から会計仕訳・振込までは、請求書支払いクラウドサービスを利用するのが便利だ。先述のAI-OCRなどの活用で、請求書が来た時点で最初にまずそれをデジタル化する。証憑書類データと会計伝票の相互リンクも必須で、証憑管理ストレージサービスの利用をお勧めする。(1)スキャナ保存、電子取引アップロード (2)領収書が会計仕訳変換後に相互に関連付けされる (3)クリックして証憑を表示 という流れ。監査の際の対応も容易だ。
なお、選択にあたってはJIIMA認証:公益社団法人日本文書情報マネジメント協会による、電帳法対応システム認証制度(電子帳簿書類/スキャナ保存/電子取引)の認証マークが付いたツールを選ぶといいだろう。
支払い側と同様、請求書発行から売掛金の回収管理までも、売上回収クラウドサービスを利用したい。ただし、例えば振り込み手数料が差し引かれて入金された場合の仕訳処理などは、少額の返還インボイスの作成は不要だが、売上対価の返還等として消費税処理する必要)があるのでシステムの設定を確認してほしい。
デジタルインボイスで請求データを共有する時代になる。売り手は、Peppol※1経由でデジタルインボイス形式の請求データを送信、買い手はそれを受信して仕入経費として計上/決済し、請求情報を金融EDI(ZEDI※2)に付加して会計支払(送金)する。売り手はZEDIを利用して売掛消込を効率化して会計回収する。
※1 Peppol:デジタルインボイスをネットワーク上で授受する標準仕様(JP PINT)
※2 ZEDI:全国銀行協会統一金融EDI方式(Electronic Data Interchange 電子データ交換
デジタルインボイス利用時のデータ処理は以下の流れ。繰り返すがクラウドサービスで仕入、支払、売上回収まで可能だ。(1)取引先からのデジタルインボイスをクラウド上で自動受理 (2)社内で内容を確認し承認すると会計処理と振込処理が連動 (3)クラウド経由で得意先へデジタルインボイスを送信 (4)得意先からの入金データをクラウドが取り込み自動消込、である。
以上述べてきたが、経理のDX化は以下を意識して成功させたい。年間でDX化計画のスケジュールを作り法定期限直前ではなくできるだけ早いタイミングで、テスト/導入/検証/フォローのステップを踏んで進める。全社の取引(発生⇒計上⇒決済)を把握し、各ベンダーのクラウドサービスのWebデモやお試し利用を使って、最適なシステムを調査する。準備・導入にあたっては完璧主義を取らず例えばAI-OCRの自動入力が8割でも効果が大きいと認識し、電帳法の要件はJIIMA認証でカバーする。移行にあたっては、独自仕様やカスタマイズに固執せず業務は極力標準化し、標準システムを利用し運用することだ。
2023年4月18日(木) オンラインLIVE配信
source : 文藝春秋 メディア事業局