検証「2027年台湾有事」

布施 哲 国際社会経済研究所特別研究主幹、信州大学特任教授

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台湾海峡の平和と安定を考える

「2021年半ばから中国がグアムの通信インフラに密かにマルウェアを仕込んでいたことを確認した」「その目的は将来、紛争が起きた時に米国とアジアとの連絡を遮断することにある」。

 5月24日、米マイクロソフトは中国政府の支援を受けたハッカーグループがグアムをはじめとする米国のインフラ基盤に浸透していたことを明らかにした。

 マイクロソフトと聞くと一般読者はワードやエクセルを思い浮かべるかもしれないが、米軍のサイバー作戦を事実上、支えている存在で、ウクライナ紛争でも世界に先駆けていち早くロシアがウクライナ国内にマルウェアを埋め込んでいた事実を明らかにしている。

 この発表で注目を浴びたのはグアムがターゲットになっていることだった。

 グアムは米軍の原子力空母やステルス爆撃機、攻撃型原子力潜水艦などが拠点とするアジアにおける米軍の一大ハブだ。台湾有事がひとたび起きれば、米軍の集結拠点、出撃拠点として決定的な役割を果たす戦略的要衝だ。真っ先にミサイル攻撃やサイバー攻撃のターゲットになるという点でも日米の安全保障専門家の見方は一致する。

 そのグアムに中国政府の支援を受けたハッカーグループが有事の際に妨害行為をおこなうマルウェアを通信インフラに仕込んでいたとするマイクロソフトの発表は台湾有事をみすえて米中がせめぎあう現実を裏付けた形となった。

 注目すべきはこのハッカーグループによる浸透工作が2021年半に始まった点だ。2021年前半にあった「あの発言」以降、米国では台湾有事がリアリティを持って語られるようになった。そして中国のハッカーグループが動き出したのはその発言の3か月後ということになる。中国もまたあの発言に刺激されて動き出したのか——。

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