月刊「文藝春秋」の名物政治コラム「赤坂太郎」。醜聞まみれの最側近を斬れない岸田だが、唯一の救いは最大派閥の迷走だ
「今国会での解散は考えておりません」と言って浮かべた不敵な笑みが今や虚しい。岸田文雄首相に対する世論の逆風は熱波と比例するように、高まるばかりだ。G7広島サミットで絶頂期を迎えたのも束の間、政務秘書官だった長男、翔太郎の更迭に続いて、ミス連発のマイナンバーカード問題で内閣支持率は下げ止まらない。
そこに、懐刀である木原誠二官房副長官の醜聞が直撃した。「愛人」疑惑にとどまらず、妻が元夫の不審死を巡って警視庁から5年前に事情聴取を受けていたことも明らかになり、岸田政権は隘路に陥った。
当の木原は「なんで妻のことで責任を取らなきゃいけないんだ」と周辺に愚痴るばかり。髪はボサボサ、無精ヒゲも目立つほどに憔悴しきり。番記者との接触を避けて、裏ルートから官邸に出入りする有様だ。
もはや今秋の衆院解散など、夢のまた夢。岸田政権は「伝家の宝刀」の柄(つか)にさえ手をかけられないまま、レームダックと化し、転げ落ちていくのか。
永田町では外交日程のすき間を縫って、岸田が9月中旬までに内閣改造・自民党役員人事に踏み切るとの見方が支配的だ。嶋田隆政務秘書官と並ぶ側近中の側近とはいえ、さすがの岸田も木原の去就に頭を悩ませていると思いきや、さにあらずという。
官邸筋は「どんなに内閣支持率が下がろうとも、首相は木原副長官を更迭する気など、さらさらない」と明かす。実際に、岸田は「まわりが自滅しているんだから、じっとしていればいいんだ」と周辺に嘯いているという。亡き領袖、安倍晋三元首相の没後1年が過ぎても後継者を決められない安倍派(清和政策研究会)の混乱を引き合いに、木原のスキャンダルに洞ヶ峠を決め込むつもりだ。この問題を初めて世に問うた『週刊文春』が「弾切れ」するのを待ち、「世論は移ろいやすきもの」と言わんばかりに、嵐が過ぎ去るまでの塹壕作戦である。
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source : 文藝春秋 2023年9月号