山本康正「きみたちは宇宙でなにをする? 2050年に活躍するために知っておきたい38の話」

文藝春秋BOOK倶楽部

出口 治明 立命館アジア太平洋大学(APU)学長特命補佐
エンタメ 読書

75歳の私も勉強になった

『きみたちは宇宙でなにをする?』。興味津々で本を手に取った。騙された。めちゃ硬い本だった。

 第1章では未来を想像する。因みに月の重力は、地球の約6分の1しかない。重力が少ないということは、少ない労力と低いコストで作業がしやすいということ。新しいチャレンジを始める上では、宇宙空間は絶好の実験場とも言える。

 第2章では日本の過去を振り返る。第3章では、きみたちの「今」の足元をみつめ直す。第4章では自分で未来を切り開く力を身に付ける方法をシェアしようとしている。

山本康正『きみたちは宇宙でなにをする? 2050年に活躍するために知っておきたい38の話』(飛鳥新社)1500円(税込)

 第1章から見ていこう。まずテクノロジーだ。「将来の夢」は今、決めなくていい。これがまるで通奏低音のように響いてくる。今決めても実はあまり意味がないからだ。AIドライバーは、人間と違ってうっかりミスがない。ファミレスはロボットが接客する。ハンバーグはヘルシーな「代替肉」が普通に。未来に「現金」は必要ない。学校の先生はAIのマッチングで選べるようになる。これらは「自分の頭で考えなくてもできる仕事」としてAIに置き換えられていく。だが、「人間同士のコミュニケーションが必要な仕事」や「意思決定や作業にAIをうまく取り込める仕事」は形を変えながらも残っていくはずだ。未来の恋愛の形については本書を読んで下さい。

 第2章。「過去」に起きた出来事を知らなければ「今」いる場所がどうしてこうなっているのかの理解も深まらない。黒船がこじ開けた鎖国の扉。それから明治維新。進撃の日本。敗戦というショック、再びリニューアルする日本。お金もちになったバブル時代。そしてきみたちの親が子どもの頃YouTubeは存在しなかった。

 第3章。勉強は数学と英語だけすればいい。将来性のある分野は人工知能やデータサイエンスだ。暗記するならChatGPTで壁打ちしろ。「やりたいことがない」人ほど勉強に価値が出る。ゲームと賢さは比例する。自分が夢中になれること、そう思えるものを10代のうちにひとつは見つけてほしい。学校に行かなくてもいい。自信とは、自分を信じる力のこと。根拠なんかなくても「自分ならできる、大丈夫」とポジティブに信じて行動してみたほうが、必ず道は開けていく。友達は運、友情は面積(いい言葉だ)。コミュ力は場数がすべて。人生の基礎は10代につくられる。その基礎を元に、いくつになっても成長していける。

 第4章。30年前の「常識」は、今では「選択肢のひとつ」になった。10代はみんなモヤモヤしている。「いいね」を追い求めない。努力は面倒だし、逃げていい時もある。恋愛はバンバンしていい。突破口ひとつで未来は開ける。自分の「好き」を磨いて、得意を武器に変えていこう。75歳の私も勉強になった。

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source : 文藝春秋 2023年12月号

genre : エンタメ 読書