故郷に帰ることができない1万の遺骨
硫黄島は「太平洋戦争」の末期に米軍が上陸し、激しい地上戦が行われた。2万3000人の守備隊のうち、2万2000人が死亡。そのうち約1万人の遺骨が、いまだ見つかっていない。
著者は北海道新聞の記者で、祖父は硫黄島守備隊と同じ小笠原諸島の部隊に所属した。戦後、衰弱して生還したものの早世した。著者は、北海道恵庭市に住む三浦孝治と出会う。彼は定年退職後の第二の人生を父が亡くなった硫黄島での遺骨収集に捧げていた。三浦を取材するうちに、著者はある強い思いを持つようになる。
――自分も硫黄島で遺骨収集をしたい。
そこには祖父の仲間たちが、まだ残されている。故郷に帰ることができない遺骨は、風化に抗い、まだ戦っている。そんな思いが沸き立った。
しかし、壁が立ちはだかる。硫黄島は自衛隊が駐屯する軍事基地で、簡単には上陸できない。遺骨収集団に参加するしかないが、派遣回数もメンバーも限定されている。誰でも参加できるわけではない。
著者は方々に手を尽くし、参加の機会を得る。本書には、遺骨収集の現場での過酷な作業が詳述されている。
問題は、1万人もの遺骨が、未だに見つからないことだ。なぜ見つからないのか。
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source : 文藝春秋 2023年12月号