岡本隆司「教養としての『中国史』の読み方」

文春BOOK倶楽部

出口 治明 立命館アジア太平洋大学(APU)学長特命補佐
エンタメ 読書

気鋭の学者による「君子の交わり」に向けた道標

 現在、アメリカと中国の対立が激しさを増している。日本の立場はまことに辛いものがある。アメリカの機嫌を損ねない範囲で中国と仲良くしなければ、日本の繁栄は覚束ないからだ。加えて、中国は理解がなかなかに難しい隣国ときているから、尚更である。中国を理解するにはどうしたらいいか。人を理解するためには、その人の来歴、即ち履歴書を読むように、国を理解するには歴史を紐解くしかない。しかし4000年の歴史を紐解くのは大変だ。手練れの水先案内人が必要だ。本書は気鋭の碩学によるまたとない道標である。

 本書は大きく3部構成をとっている。まずⅠは、古代から現代まで受け継がれる「中国」のはじまりについて。なぜ、「一つの中国」をめざすのか、それはバラバラだからこそ。中国では、漢代に皇帝権力と儒教思想が結びつき、儒教的世界観が体制とイデオロギーの一体化した「秩序体系」として定着、つまり全世界が「皇帝の実効支配が及ぶ華」と「夷」に大別されるようになった。中国史を貫く儒教には「進歩」という考え方がない、従って、改善は「復古」という言葉を用いる。

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source : 文藝春秋 2020年12月号

genre : エンタメ 読書