岡本隆司「悪党たちの中華帝国」

文春BOOK俱楽部

出口 治明 立命館アジア太平洋大学(APU)学長特命補佐
エンタメ 読書

気鋭の歴史学者による1400年史

 中国は巨大な国である。あまりに巨きすぎて手に余る。

 著者は、気鋭の中国史の歴史学者であるが、まず「悪党たちの中華帝国」というタイトルに惹かれる。もっと魅力的なのはその中味だ。

 たとえば、「第Ⅰ章 『中華帝国』のあけぼの―大唐帝国」とあるではないか。さらに「一唐の太宗―明君はつくられる」とある。普通の書物であれば、中華帝国のあけぼのなら秦の始皇帝ぐらいで、悪党たちなら秦の趙高、漢の王莽あたりが並ぶはずだ。

 筆者の弁明を聞いてみよう。

〈「評判のよい人物に興味がわかない。悪名の蔭にこそ、歴史の真相を理解する鍵がひそんでいると思うからである」。

 だからタイトルの「悪党たち」のほうは、ことさら奇を衒って、特殊な意味をもたせてはいない。日本中世のいわゆる「悪党」でもなく、たんなる現代語、悪名高い人物群の謂である〉

 さらに「中華」「中国」という呼称については次のように記す。

〈秦漢は、ほぼ黄河流域のみの「中華帝国」だった。さらに南北へひろがって、はるかに現代の中国に連なる規模を有するのは、それから数百年を経た隋唐帝国あたりからである〉

 なるほど、唐の太宗が最初に来る理由がわかった。なお、「ほぼ同じ時代ごとに6組の『対(ペア)』、12名の『悪党』」を選んだ。「時代の輪郭を描くため、およそ対極に位置する『悪党』」とある。

 さてどう料理するか。

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source : 文藝春秋 2022年11月号

genre : エンタメ 読書