『台湾漫遊鉄道のふたり』楊双子著、三浦裕子訳/中央公論新社
『ノーマル・ピープル』サリー・ルーニー著、山崎まどか訳/早川書房
『永遠と横道世之介』吉田修一/毎日新聞出版
結婚話から逃れるため、日本統治下の台湾にいっとき暮らすことにした日本人作家、千鶴子と、通訳をつとめる台湾人の千鶴の、おいしいものを巡る旅の話だと思って、この『台湾漫遊鉄道のふたり』を読みはじめたら、ストーリーは思わぬ方向にどんどん進んでいって、どんでん返し的なことは何もないのにラストのラストまで目が離せない。千鶴の背景にある台湾の文化と歴史を描きつつ、異文化と接すること、支配と被支配の関係、差別についてなど、直接的な言葉は書かれていないが、本当に深く考えさせられた。文章は軽やかだが、書かれていることはけっして軽やかではない。読んでよかったと、読み終えたとき心底思った一冊。
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source : 文藝春秋 2024年1月号