ガザは21世紀の硫黄島だ

外事警察秘録特別篇

北村 滋 前国家安全保障局長
ニュース 国際 歴史

 2023年9月18日、米国政府は5人の米国人人質解放と引き換えに、韓国で保管されていたイランの資金60億ドルの凍結を解除した。

 同年10月7日の8日前、ジェイク・サリバン国家安全保障顧問は、中東情勢は過去20年間、9・11以降で最も安定していると述べた。

 これらの事象は2つのことを意味している。

 第一に、米国の安全保障の政策立案者たちは、ハマスによる一連の攻撃が発生する直前までその予兆すら知ることはなかった。つまり、同盟国イスラエルを含むインテリジェンスの失敗だ。

 第二に、ハマスの一連の攻撃に対する強力な支援者であるイランに対して、最も行ってはならないタイミングで妥協をしたこと。すなわち、米国が長期的に適切なイラン政策を遂行していないことを示している。

北村滋氏

 10月7日、土曜日早朝、ガザ地区を拠点とするハマス軍事部門は、イスラエルに対して驚愕すべき広範囲の攻撃を行った。この攻撃は、数千のロケットがイスラエルの町や都市を標的にし、数百のハマスの戦闘員が陸・空・海からイスラエルに侵入するというものだった。

 ハマスによるイスラエルへの攻撃は、その脆弱性を突き、かつ、入念に計画され、高度に組織化された作戦と結論づけていい。ハマスは、ドローン、ブルドーザー、爆薬を使用してイスラエルの監視と通信システムを無効にし、両者を隔てる境界を越えて侵入し、イスラエルの軍事基地や村を攻撃した。続いて、ハマスの戦闘員は壁を突破し、イスラエルに潜入し、軍事および民間施設を標的にして銃撃を行った。

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source : 文藝春秋 2024年2月号

genre : ニュース 国際 歴史