昼間に疲れておくこと、ウトウトは禁物

私の「不眠」解消法

草笛 光子 女優
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 昨年10月で90歳になった、女優の草笛光子さん。年齢が進むにつれて寝つきが悪くなり、夜更かしになってきたことが、悩みのタネだという。安眠法の本を読み漁り、よく眠れると謳うサプリなども試してみたが――。

 定期的に受けている健康診断では悪いところも見つかりませんが、日々、老いを感じています。年を取るとよく眠れなくなるといいますけれど、私も御多分に洩れません。苦労しているのは、寝つきが上手くいかないことです。

 スーッと眠りに入って、スッと目覚めたい。なのに寝つけません。夜になると、逆に目がパッチリ冴えてしまい、考え事をしたり新聞を読んだり、ゴトゴトと片付けを始めたりする癖がつきました。テレビをつければ、素晴らしい星空や自然の景色だけ映す素敵な番組をやっています。「行きたいなぁ」なんて考えながらぼんやり観ていると、ますます眠気が湧きません。

 一方で「早く寝なさい。明日が大変よ」と、自分で自分を追い立てます。眠ることに神経を使いすぎて、何かと戦っているみたいで、よけいに気が疲れてしまうのです。

 そんなこんなで、寝つくのがついつい2時3時、ひどいと4時。朝は普通に起きてもボーッとしていて、疲れが取れないので昼間に眠くなります。お休みの日だったら二度寝、三度寝。四度寝すると、もう夕方。五度寝したら、そのままあの世へ行くんじゃないかと思うくらいです。

 遅くまで起きているとお腹が空くので、昼間のうちに、食べる物を部屋に隠しておきます。特に、夜中に食べる柿の種が美味しい。独り住まいなのに、なぜ隠すのか? 交代で泊まり込んでくれるお手伝いさんに見られると、恥ずかしいからです。

 隠し忘れた晩や食べ足りないときは、「下のキッチンにパンが残ってたな」と思いついて、取りに行きます。お手伝いさんはもう寝ていますから、音を立てないようにスリッパを脱いで、抜き足、差し足……。電気も点けずに階段を下りていくので、大変なスリルです。

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source : 文藝春秋 2024年2月号

genre : ライフ 芸能 映画 ヘルス