選挙特番の重圧を乗り越えた2つの工夫

私の「不眠」解消法

畠山 智之 NHK財団専門委員・元NHKアナウンサー
ライフ テレビ・ラジオ ヘルス

「NHKニュース おはよう日本」「ニュース7」「ニュース9」と、NHKの“顔”として長く報道番組を担当してきた畠山智之氏(65)。アナウンサーという、時間厳守の職業ならではの「眠りの悩み」について語ってもらった。

 長く報道番組のキャスターを担当してきました。大事件への対応など夜を徹しての放送は眠気との戦いなのでは……と思われるかも知れませんが、伝えることが次々に起きて、逆に目が冴えてしまいます。「アメリカ同時多発テロ事件」や「西鉄バスジャック事件」のときなども長時間にわたってしゃべり続けましたが、こうした「予期せぬ出来事」への対応の時は睡眠で悩むことはありません。

畠山智之氏 ©文藝春秋

 その一方で、あらかじめ決まっている番組で、眠れなくなることがある。それが、国政選挙の開票速報です。

「選挙を担当する」と決まった時から、しばらく、眠れぬ日々が続きます。というのも、この時点では候補者の名前が頭に入っていないからです。国政選挙になると立候補者だけで1000人を超えます。その1人ひとりの「顔」と「名前の読み方」を正確に覚えなければなりません。加えて地域ごとの各政党の勢力図も把握しておく必要があります。

 それらどれ一つを取っても「間違い」が許されるものはありません。私の場合、このプレッシャーで、眠れなくなるのです。

 これをどう克服するか……。そのためには、毎日、少しずつでも、一つ一つ、記憶していくしかないのです。こうして頭にたたき込んだ情報量が増えると、あら不思議。心に余裕のようなものができて、「眠れる夜」が増えてきます。このあたりはアナウンサーによっても違うのかもしれません。

 ただ、そうは言っても選挙前夜などはやはり気が昂って眠れなくなります。そんな時私は自分に暗示をかけます。

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source : 文藝春秋 2024年2月号

genre : ライフ テレビ・ラジオ ヘルス