国語辞典編纂者の飯間浩明さんが“日本語のフシギ”を解き明かしていくコラムです
ネットの「ヤフーニュース」に音楽コンシェルジュのふくりゅうさんが寄せた記事(2月21日)に関心を引かれました。「モチベーション」(動機づけ)ということばは、TRFの1995年の曲「Overnight Sensation」(詞と曲・小室哲哉)から広まったとのこと。
〈“20才やそこらじゃ 人生のモチベーション”と歌われた結果、一般的に広まった逸話を持つ〉
SNSでは「そうなんだ!」と感心する反応もありました。でも待てよ、「モチベーション」はそれ以前から見聞きしていたはず、と気になりました。
昔読んだ本を調べると、たとえば山根一眞『変体少女文字の研究』(86年)に〈〔面談した高校生は〕女子大生ほど学習意欲のない少女たちだが、書くモチベーションは共通している〉とあります。自然に使われていますね。
ただ、このことばは、以前は評論や硬いエッセイなど、限られた範囲で使われていたのも事実です。『三省堂国語辞典』に項目が立ったのは2001年刊行の第5版からで、比較的最近です。意味は〈動機をあたえること。動機づけ〉。
さらに、第6版(08年)では説明がつけ足され、新しく〈動機や意欲。やる気〉の意味も加わりました。第8版(22年)では〈モチベ〉という省略形の俗語も添えられました。このことばが大衆化してきた軌跡が分かります。
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