国語辞典編纂者の飯間浩明さんが“日本語のフシギ”を解き明かしていくコラムです
NHK高松の夕方の番組「ゆう6かがわ」に出演しました(1月19日)。私は香川県高松市の出身で、18歳までこの街に住んでいました。少年の頃は本が好きだったとか、当時からことばに関心があったとか、そんな話をしました。
話の中で、五味哲太アナウンサーから香川の方言で好きな言い方はあるかと質問を受けました。私は「なんがでっきょんな」という挨拶を挙げました。
これは「何ができつつあるの?」と尋ねることばです。誰かが作業をしているところに通りかかった人が、こんなふうに声を掛けます。「とぼけた感じもあって面白い」と感想をつけ加えました。
全国的にはあまり知られていませんが、たとえば、NHK高松放送局放送部編『さぬきのことば2』(美巧社、1988年)でも「なにしよん・なにができよん」として紹介されています。挨拶代わりで、あまり答えを期待しない場合でも使うことが説明されています。
「好きな地元の言い方」を紹介できたのは不思議だな、と後で気づきました。私はよく「好きな日本語は何ですか」という質問を受け、いつも困ります。私にはどの日本語も同じくらい大切で、いくつかを選ぶことはできません。
これは、私が辞書を作る仕事をしているからだと分析しています。辞書に載せるためにことばを調べていると、どのことばにも面白さがあることに気づきます。「平凡」という平凡なことばでさえ、調べていくと、このことばならではの歴史があって、わくわくします。
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source : 文藝春秋 2024年3月号