気をつけて、それは無礼語です!

「なるほどですね」で取引停止⁉ 今こそ考えたい新しい言葉のマナー

関根 健一 『明鏡国語辞典』編集・執筆協力、日本新聞協会用語専門委員
飯間 浩明 『三省堂国語辞典』編集委員
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「なるほど〜」は失礼!? 言葉遣いに悩むすべてのひとに贈る白熱対談

 飯間 今回、対談のお話をいただいて、「はたして私でいいのかな」と思ったんですよ。

 関根 どうして?

 飯間 辞書に詳しい方はよくご存じだと思うのですが、実は関根さんが編纂に携わっていらっしゃる『明鏡国語辞典』(大修館書店、以下『明鏡』)と、私が編者として加わっている『三省堂国語辞典』(三省堂、以下『三国』)とはカラーがだいぶ違いますよね。読者からすると「編纂者同士の対決」のように見えてしまうのではないかと危惧しています(笑)。でも実際は、関根さんが以前に出された『品格語辞典』、そして今回出された『無礼語辞典』(ともに大修館書店)は、どちらも非常に参考にしています。今日は辞書の垣根を越えて、色々な知恵を伺いたいと思ってやってきました。

『明鏡国語辞典』から生まれた2冊 ©文藝春秋

 誤解を恐れずにいえば、『明鏡』は言葉の規範を利用者にきちんと教えようとするのに対して、『三国』は正誤を決めつけない。決して規範をないがしろにしてはいないのですが、「この言葉は現在はこう使われている」と、ありのままに報告することを重視しています。

 関根 辞書といえばよく「かがみ論」が持ち出されます。つまり、辞書は規範を示す「鑑」であるとともに、実態を映す「鏡」でもある。どちらかというと『三国』は「鏡」、『明鏡』が「鑑」に近いのかな。とはいえ、やはり作る側としては両方の「かがみ」をバランスよく盛り込みたいという気持ちがあります。『明鏡』は規範に厳格というよりも、時と場合に応じて、こういう言葉や表現を使うといいのでは、といったアドバイスを取り入れています。

 飯間 『無礼語辞典』は、まさにそんな思いから生まれた一冊でしょうね。『三国』はアドバイスをしなくて物足りないと言われることもあります。そこで、『三国』の最新版(第8版)では言葉の使い方についての記述を増やしました。『無礼語辞典』でも取り上げられている「感心」もその一つです。この言葉には評価を下すニュアンスが含まれていますね。それで、「お話に感心いたしました」のように目下の人が目上の人に使うと失礼に感じられることがある。その点について注記しました。こういうところは『明鏡』と同じく「鑑」を重視した記述になったかもしれません。ですから、「鑑」と「鏡」の両方をバランスよくという考えには大いに賛成です。

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source : 文藝春秋 2023年11月号

genre : エンタメ 社会 読書 教育