「明日、死ぬかもしれない」本気でそう思って生きていることが、サッカー指導者としての僕の原点。選手一人ひとりと接する一瞬一瞬が、真剣勝負です。
1月8日に行われた全国高校サッカー選手権の決勝戦。出場3回目の僕たち近江高校は、優勝3回を誇る強豪・青森山田高校と対戦しました。1―3で敗れましたが、選手たちの快進撃と独創的なプレースタイルは、チームのスローガン「Be Pirates!」から、「海賊サッカー」「琵琶湖の暴れん坊」と、たくさんのメディアで取り上げられました。
おかげですっかり有名になったのでしょうか。SNSのダイレクトメッセージでラブレターをもらう部員が続出。一方、監督に届いた反響といえば、サウナの水風呂で横に入っていたオッチャンに声を掛けられたことくらい。
「なんやねん、この差は!」と、八つ当たりしています。
2015年4月に監督に就任し、自分で部員を集めるところから始めて、2年目にはインターハイに出場します。5年目で選手権に初出場し、8年目の今年は決勝へ。けれど、僕自身の選手人生は順風満帆とは程遠いものでした。
1985年に滋賀県虎姫町で両親共に教師という家庭に生まれますが、「みんなと同じ」を求められる学校生活が大嫌い。着席もままならない問題児だった僕を救ってくれたのが、小学生で始めたサッカーでした。高校3年の進路選択では、進学を勧める監督の反対を押し切ってプロ入りを目指し、清水エスパルスの練習生を経て、なんとか入団に漕ぎ着けます。ところが、夢にまで見たプロ生活は想像を絶する厳しさでした。1年目で膝の前十字靭帯を断裂する大怪我を負い、1試合も出場できないまま2年で契約を打ち切られました。シンガポール、ドイツ、ルーマニアを転々とした後、22歳で現役を引退。その頃には、あんなに好きだったサッカーが嫌いになっていました。
「人生をリセットしたい」。帰国後に進学した関西学院大学では、教室の一番前で黒板に齧り付き、夢中で勉強しました。子どもたちのサッカーのコーチをして生活費や旅費を稼ぎ、休みに入ると世界中を旅しました。
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