スタジアムの炎、風、匂い……。ただただ圧倒されました
昨年12月9日にカタールから帰国後も慌ただしい日々が続いていました。最大のイベントは、2週間後に行われた「一級審判員」の体力テスト。これにパスしなければ、2023シーズンの試合の割り当てを受けることができないため、帰国後もトレーニングを続けていました。
毎年2回行われるこのテストでは40mを6秒以内で六本走るスプリントテストと、75m走を15秒以内+25mを18秒で歩くのを40セット行うというインターバルテストがあります。なかなかハードですよね。今回は余裕をもって合格できて、いまは、晴れ晴れとした気持ちです。
昨年11月23日、W杯の審判員として、ベルギー対カナダの試合で初めてピッチに立ちました。W杯で女性が審判員に選ばれるのは史上初めてのこと。本当に光栄です。
試合直前、頭に思い浮かんだのは、女子サッカーの道を切り開いた先輩や、応援してくれる仲間、家族の顔。感謝の思いや、周りの人のいろんな思いを背負ってピッチに立とうと決めていました。
いざ、バックステージからトンネルを抜けて、芝生に足を踏み入れると、スタジアムのピッチには炎が上がり、選手たちの気迫、サポーターの歓声が一体となり、全身にまるで振動のように伝わってきました。炎の熱、スタジアムに吹く涼しい風、嗅いだことのないような匂い。感覚が研ぎ澄まされ、ただ、ただ、圧倒されてしまいました。
試合当日、審判員は、選手と同じ時間帯に会場入りし、審判員でミーティングした後、ウォーミングアップを重ねます。試合前のルーティンは、強いて挙げるならば「今日はどんな表情で臨もうかな」と考えるくらいです。じつは表情や髪型はレフェリングにおける一つのメッセージになり得ます。この試合では、主審のテンションに合わせて、歯は見せないくらいの笑顔を設定しました。
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source : 文藝春秋 2023年3月号