壮大な物語に挑む 細川護熙の襖絵

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「熊本県知事を務めた時に多くの文化人に出会いました」と細川護熙氏(86)。政界引退後は書画や作陶など幅広い創作活動に励む。今春は高野山別格本山 總持院へ大作を納めた。

東京のアトリエにて。計32面の襖を一幅の絵巻として描いた《四季山水花鳥図》は、全長38mに及ぶ。「今回、改めて弘法大師(空海)様についての本を読んだのですが、その真髄をなかなか理解できずにいまして……。構想を練るのに1年ほどかかりました」(細川氏)。いよいよ数日後に高野山へ奉納される

2年ほどの創作を経て|文=細川護熙

 2022年の夏に、總持院の宮田永明(えいみょう)御住職からお電話をいただいて、2024年の春に重いお役をお受けすることになりそうなので、その記念に總持院に襖絵を描いてもらえないかとお話をいただきました。

 今回描いた襖絵は《四季山水花鳥図》、御大師様の旅を主題として描いたもので、太陽は御大師様、横には御大師様の生まれ故郷の讃岐富士を象徴的に描き、四季という輪廻転生の世界を表現しています。応接間には高野山ゆかりの高野槙も描きました。御大師様の軌跡は日本列島をはるかに超えるものであり、地理的にも季節的にも、あらゆるものを包含していることが絶対条件だと思い、《四季山水花鳥図》というタイトルにしました。

 高野山には、御大師様をこの地に導いた丹生都比売(にうつひめ)大神が祀られていますが、この丹生都比売は、古来魔除けとされる丹(赤い顔料)と、不老不死をもたらすなど神秘的な力を持つ水銀をつかさどる女神です。御大師様が渡られた唐土(もろこし)でも、丹を不老の象徴として扱う文化がありました。そこで御大師様を表す太陽には、唐の玄宗皇帝が愛したものと同じ、最高級の銀朱を使用しました。作業は金箔を貼るだけでも大仕事なので、いつも襖の表装などをお願いしている若い職人さんたちに手伝ってもらいました。

 構想から、仕上がりまでずいぶん時間がかかりましたが、無事に納めることができ、安堵しています。

總持院の大広間に配された襖絵。弘法大師を太陽になぞらえ、四季を通して旅する物語がドラマティックに表現されている。長年の使用に耐える国産の楮雁紙(ちょがんし)に金箔を貼り、中国や欧州の最上級絵具を使用。「画材選びは東西の交流も意識しました」

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source : 文藝春秋 2024年6月号

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