戦国の三英傑に仕えた茶人に注目が集まっている。文人として活躍し利休が一目置く高名な茶人でもあった有楽斎(うらくさい)が四百年遠忌を迎えた。「楽しみ有り」を求めた数奇な運命を京都の建仁寺塔頭正伝永源院でたどる。
写真=阿部 浩
茶の湯は客をもてなす道理を本位とする也
逃げたのではない。信長の弟にして激動の時代を生きた
織田有楽斎(織田長益)は1547年、織田信長の弟として生まれた。信長より13歳、年下だった。19歳のときに武将の子として戦に臨んだものの、残念ながら武功を挙げることはなかったという。本能寺の変の際は、明智光秀の謀反を耳にすると滞在先の二条御所を抜け出し岐阜に逃れ、「逃げの有楽」とも揶揄された。
「後世自害は究極の美学とされましたが、戦国の乱世で逃亡はごく当たり前の手段です。決して恥ではなかったと思います」と真神住職は語る。
一方、有楽斎は信長の忠臣・平手政秀に茶道や和歌の手ほどきを受け、教養深い有識者として異彩を放った。
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source : 文藝春秋 2023年5月号