日本人が千年以上、愛してやまない 唐紙の世界

ライフ アート 歴史

遣唐使が日本に持ち帰ったといわれる唐紙。谷崎潤一郎は『陰翳礼讃』で「唐紙や和紙は一種の温かみを感じ、心が落ち着く」と書いた。日本人にとって「唐紙」とは。1000年の伝統を受け継ぐ唐紙の、いまと未来を訪ねた。

取材=相澤洋美 写真=佐藤 亘

手摺りならではの濃淡やかすれなど、工業プリントにはない味わいの唐紙。シャンパンゴールドの「のせ色」が、嵯峨の豪商、角倉了以も好んだ「花兎」の文様をモダンに浮かび上がらせる

とこしえの光を湛える美しい装飾紙

 1624(寛永元)年に京都で創業以来、唐紙を作り、今や日本で唯一続く唐紙屋の雲母唐長(きらからちょう)。受け継がれてきた板木(はんぎ)を使い工業製品やデジタルでは伝えきれない人々の願いや物語を写す。

1895(明治28)年の内国勧業博覧会用に作成されたチラシ

江戸時代から伝わる600枚を超える板木。平安や厄除けなどを願って象られた文様が彫られている

刷毛でなく、「篩(ふるい)」という円い道具で絵具を板木へのせる。その音がしんとした空間に響く

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source : 文藝春秋 2023年6月号

genre : ライフ アート 歴史