歌人、小説家、実業家。加えて宿に精通し、温泉ソムリエの資格も持つ小佐野彈氏は「ライフスタイルの変化、社会の変化とともに、温泉も変化している」という。新たな出湯の楽しみをもたらす進化系温泉の魅力を小佐野氏が説き明かす。
短期湯治が叶う。新しいスタイルの 「シン・温泉」誕生(文・小佐野彈)
僕たちのライフスタイルは、日々めまぐるしく変化している。コロナ禍以降は、社会の変化も顕著だ。
志賀直哉や島崎藤村の時代は、温泉に2週間や1カ月といった単位で逗留するのが主流だった。いっぽう、現代人の生活はすこぶる忙しい。「肩こりと腰痛につき温泉療養をしたいので2週間休みます」と上司に申し出たら、一笑に付されるのがオチだ。今日の日本で、昔日のような長期の湯治はむずかしい。
ただ、社会の変化とともに、温泉も変化し、進化している。ボーリング等掘削技術の発達や地質学の発展に伴い新しい温泉が多く発見された。都心や首都圏で天然温泉施設を見かけることも珍しくなくなった。旧来の温泉地においても、キャンプ場を併設した湯処やグランピングを楽しめる温泉施設、あるいはコワーキングスペースを設けたワーケーション型の温泉宿など、新しい滞在スタイルを提供する施設が増えている。
環境省は「チーム 新・湯治」という取り組みを実施している。報告によれば都市近郊の温泉への「通い湯治」やウェルネス・プログラムと組み合わせた2泊3日程度の短期湯治でも、心身にさまざまな好影響があることがわかったらしい。
昨今、温泉地に若者や外国人の姿が格段に増えた。マナーが問題視されることもあるが、僕が見ている限り、大多数の若者や外国人は入浴前にしっかり体を洗うし、いきなり浴槽にドボンと飛び込むようなことはない。
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source : 文藝春秋 2023年3月号