文在寅「ひきこもり大統領」の危ない戦略

牧野 愛博 朝日新聞記者・広島大学客員教授
ニュース 政治 経済 韓国・北朝鮮
「謙虚で清廉であるべき」という信念を持つ文在寅大統領は、歴代韓国大統領の中では人に会いたがらない珍しいタイプと評される。「最側近は夫人」と皮肉る声も広がる。だが、人と会おうとしないがゆえに摩擦が広がっている、という指摘もあり……

10本以上の歯がインプラント

 6月28日の大阪、主要20カ国・地域(G20)首脳会議。韓国の文在寅大統領(66)は、ホスト国として参加者を迎えた安倍晋三首相(64)と固い表情で握手した。その時間はわずか8秒。文氏は最初、安倍氏にあいさつの言葉をかけるしぐさをしたが、握手をしている間、視線は前方のカメラに向けたまま、安倍氏と言葉を交わすことはなかった。徴用工問題で進展がないため、日本側は日韓首脳会談の開催に応じなかった。

「いかにも、文氏らしい」

 かつて文在寅氏と面会したことがある、日本政府の元外交官が語る。

「これが金泳三氏や盧武鉉氏ら、他の韓国大統領だったら違う結果になっていたはずだ」

 金泳三氏が安倍首相と握手すれば、その機会を利用して、カメラの前で「関係改善のために、今から首脳会談をやろう。夕食会が終わった後でも良い」と詰め寄っただろう。

 2日後の6月30日、トランプ氏と一緒に盧武鉉氏が板門店に赴いていたならば、嫌がられても一緒に南北軍事境界線を越えて北朝鮮区域内に足を踏み入れただろう。

 文氏にはそれができなかった。

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source : 文藝春秋 2019年9月号

genre : ニュース 政治 経済 韓国・北朝鮮