■企画趣旨
CRMやマーケティングオートメーション、行動データ分析、タスク管理など、セールステックの進化・普及により、営業効率は飛躍的に向上をしています。より商談の精度を高めるために、顧客のニーズや要望を理解し、適切なタイミングで、最適な営業を仕掛けることが重要になる中、いざアプローチを試みる段階になると、「顧客の情報が足りない」「キーマンにつながらない」「顧客の検討フェーズが見えてこない」「人的リソースが不足し顧客対応がおろそかになっている」などの課題が顕在化し、勝機を逃すといったケースも少なくありません。
こうした課題を克服し、営業戦略を推進していくうえで重要となる、「目標設定」「競合分析」「顧客ニーズの深耕」「アプローチの選択」「プロセスの設計」「チャネルの吟味」「CRMの活用」「営業人材・組織の育成」「成果の分析」といった要素を今一度整理し、効率的な営業を科学的に整理していくことが必要となっています。
本カンファレンスでは、「圧倒的な成果を出す、2024年度の営業『人材・組織・デジタル』変革」に焦点を当て、営業DXの最先端の取り組み事例や、営業人材の育成、組織営業のあるべき姿などについて検証し、営業のさらなる可能性を考察した。
■基調講演
2024年度の“営業戦略”総整理
~ 絶対達成のための予材管理、組織改革、人材育成 ~
株式会社アタックス・セールス・アソシエイツ
代表取締役社長
横山 信弘氏
企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。15年間で3000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラム、昨今はYouTubeチャンネル『予材管理大学』を通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。
◎絶対達成のための営業戦略、組織改革、人材育成について
営業は“ダイエット手法”のようなものだ。時代によって流行があり(管理会計や生産管理にはない)、他の手法を否定することもある(バナナダイエットはだめとか)。そして、だいたい「原理原則」を守ればなんとかなる(横着なだけ)。
今、営業組織に必要なのは、営業目標を絶対達成させる組織にすること。安定して目標達成できていない/できる営業とできない営業の差が激しい/営業の定着率が悪い、といった問題に直面している組織は多いだろう。
これらの問題解決のためにはマネジメントの手法を変えることだ。(1)個人のスキルアップは大変であり時間がかかる(2)リーダーシップを発揮させてもその場しのぎになる(3)マネジメントの変更なら負担も時間もかからない。この3つがその根拠。(3)で認識すべきは「デジタル技術の恩恵を強く受けられる」こと。デジタル技術によりマネジメントの仕組み・方法を変えるのが現代においては効果的なのである。
◎絶対達成のための営業マネジメント手法について
マネジメントとは何か?部下育成や組織の目標達成のための仕組みづくりやチームビルディングでは、ない。マネジメントは組織を対象としておらず、個人でできる。意識改革やスキル開発は含まれていない。マネジメントは「管理」であり、リソースを効果効率的に配分することである。
例えば在庫管理とは、顧客の需要に対し過不足なく製品を供給できるよう適切に在庫を調整すること。原価管理は、原価の設定が適切かどうかを分析し原料や製造工程を調整することだ。ボトルに大きな石⇒小石⇒砂の順番で入れると最も効率がいい(多く入る)ことは広く知られる話。目標達成させるためにリソースを効果効率的に配分すること、これこそがマネジメントの基本である。
限りある人生において、大切なこと(大きな石)は優先して行うべきだ。加えて、働き方改革で労働時間が減少していく。つまりボトルが小さくなっていく。よって、適切に調整するマネジメント力はますます重要視されるようになる。
ここで効果的なのが「予材管理」だ。ポテンシャルある予材(予め仕込んでおく仮説)を優先することで、効率的に目標が達成できる。案件管理=引合い対応がメインだと、どんなに人や時間を費やしても目標達成は難しい場合が多い。
営業マネジメントは、生産管理や在庫管理、原価管理、管理会計と同じく体系的に学んで実務に活かすべきだ(可能なら若いころから)。知識がないと情報の料理はできない。そこで予材管理が重要になる。目標の2倍の予材を仕込むことで安定して達成する手法をぜひ学んでほしい。
上記スライドの「見込み」「仕掛り」「白地」を組織で共有しつつ適切に調整していくのがマネージャーの仕事=マネジメントだ。目標の2倍の予材を仕込むためには、予材資産(今期に縛られない中長期的な予材)が不可欠だ。予材ポテンシャルがある営業先に定期接触して関係を構築・維持して、随時予材の入れ替えを行い、案件が発生しそうだったらギアを上げて攻める。予材ポテンシャル分析をして種まき・水まき活動を続け、随時、今期の予材に具体化・昇華させるのだ。
先述したデジタル技術の恩恵はこの活動において強く受けられる。当社の「予材ポテンシャル分析シート」「KPIカウントシート」「予材管理シート」などもその例だ。これらを利用してリソースを効果効率的に配分する、適切に調整することが肝要だ。
予材管理のメリットを整理すると、(1)シンプルなので覚えやすい、続けやすい(2)再現性が高く、どの業界でも活かせる(3)運用すればするほど複利効果が見込める。一方、デメリットは、(1)一発逆転を狙えない(ロマンがない)(2)淡々と継続する力が必要(スキルより習慣が大事)。こうしたデメリットはあるが、売上=トップラインを増やし目標を達成するマネジメントには予材管理は有用だと確信している。
YouTubeチャンネル「予材管理大学」には500本以上の動画が上がっている。また、部下育成やチームビルディングで悩んでいる方は、『若者に辞められると困るので強く言えません』(東洋経済新報社)をご一読いただければ幸いだ。
■特別講演(1)
“無敗営業”──必ず成果を出す「営業組織」づくりの本質
~ 接戦をものにするデータ活用と対話が組織を強くする ~
TORiX株式会社
代表取締役
高橋 浩一氏
東京大学経済学部卒業。外資系戦略コンサルティング会社を経て25歳で起業、企業研修のアルー(株)に創業参画(取締役副社長)。事業と組織を統括する立場として、創業から6年で70名までの成長を牽引。同社の上場に向けた事業基盤と組織体制を作る。2011年にTORiX株式会社を設立し、代表取締役に就任。これまで4万人以上の営業強化支援に携わる。
営業マネジメントを改革するために、見える化/人材育成/コミュニケーション強化、という打ち手をとる会社は多い。が、得てしてそれぞれ以下の状況に陥りやすい。何でもかんでも見ようとしてツールが使いこなせない/人材育成の焦点が絞りきれず具体的なアクションに移せない/達成しない限り褒められないので上位2割以外が浮上しない……。
また、n値(母数)が5000以上の当社調査によると、営業の目標未達チームの多くは勝ちパターンの共通言語を持っていない、頻繁に話題にのぼるKPIがない、という結果が出ている。これを踏まえて本日は「共通言語の重要性」をお伝えしたい。
下のスライドのように「勝ちパターン」を共通言語化することが大切だ。フェーズの定義/SFAのダッシュボード/人材育成の「型」に落とし込むのである。
当社のフェーズ定義の中で「要件整理済」の部分は特に守ってもらうようにしている。前段階から要件整理済そして次の段階にスムーズに進まない案件は、勝ちパターンが実行できていなかったり、勝ちパターンを誤認している可能性が高い。アラートダッシュボードで「重要フェーズ付近の停滞」をチェックしている。また、大型案件受注よりも日常的なフェーズの進捗を高く評価し、職場に良いムードを作るようにしている。
成果が出ない人材には育成の「型」を伝授している。若い人には動画マニュアルの重要部分・勝負の場面を指定し、見て学んでもらうことも多い。勝ちパターンをカテゴリごとに集計して「やっていることが正しいか」の検証も行っている。理想の受注が増えて、好ましくない・減らしたい失注(例=稟議支援できず、競合にコンペ負け)が減る、と言う状況が常に続くことが大切だ。接戦案件での失注を減らすための流れは、失注理由のカテゴリを定義⇒理由を集計・見える化⇒「減らしたい失注」をモニタリング、である。
当社の社内会議は研修色が強い。接戦(決着案件)から皆で学ぶ営業会議になっている。金額の大小より、いかに目指している勝ちパターンを再認識しやすいかで取り上げる事例を選んでいる。そして当社には、以下の共通言語があり、調査でもそれらの浸透が裏付けられている。
・営業が成果を上げる上で最もインパクトのある行動は「いつ・何をする」ことですか?⇒初回訪問から2日以内の要件整理
・頑張っていても成果のあがらないメンバーに対して、マネジャーは真っ先にどこを見ますか?⇒ダッシュボードの「要件整理済」近辺の停滞
・毎日の営業活動の中で、メンバーはどんなことをしたら上司から褒められますか?⇒「要件整理済」段階から先に進めること
このような共通言語があると、マネジメント効率が格段に上がる。営業組織の命運を分ける「四つの角」は勝ちパターンから始まる。(1)勝ちパターンがある(2)活動の実態が見える(3)人が育つ仕組みがある(4)コミュニケーションのバランスが良い。(1)~(4)が幸せな「共創」につながる。(1)~(3)をしっかり揃えて土台を築き、心理的安全性を確保し笑顔で働ける状態を作ってほしい。
では、どんな共通言語があれば良いのか?
・クイックレスポンスは「返信1日」「解決2日」
クイックレスポンスは特にハイパフォーマーが武器にする。「対面」に次いで、顧客との関係構築に大きく影響する。7割の顧客が求めるレスポンスは「最初の返答は1日」「解決するまで2日」。スーパークイックレスポンスは顧客に強い印象を残す。
・難しい要望こそ「深掘り」せよ
目標がなかなか達成できない営業は要望へそのままリアクションする。ハイパフォーマー営業は「要望を深掘りする」。真面目、誠実一辺倒ではなく、顧客の真意や目的を掴みたい。
・10分電話商談でキャッチボール
「電話+メール」は、対面商談に次ぐ大切なコンタクト手段だ。両方を駆使した「10分商談」の高速回転は有用だ。多くの顧客が求めるのは「週に1回」ペース以上のやりとり。「2~4回目の再提案で完結」を望む顧客が8割。最強のクロージングトークは「レスポンスを示すこと」だ。
こうした有用なさまざまな施策・打ち手=やるべきことを「やれば(達成率が)上がる」状態へ持っていきたい。共通言語を「皆が信じられる」キーアクションに落とし込むことが重要である。
■特別講演(2)
科学的に『成果をコントロールする』営業術
~ 6つの問いで考える法人営業の理想と現実 ~
株式会社セレブリックス セールスカンパニー
執行役員 カンパニーCMO
セレブリックス営業総合研究所
所長 兼 セールスエバンジェリスト
今井 晶也氏
セレブリックス営業総合研究所の所長およびセールスエバンジェリストとして、法人営業・法人購買・営業とAIの実務に関する研究を行う。現在は執行役員 CMOと新規事業開発の責任者を兼任。管掌するプロダクトとして営業コミュニティのYEALE、営業専門の人材紹介のSQiL CareerAgent、日本最大級の営業エンターテイメントJapanSalesCollectionなどがある。Everything DiSCの認定トレーナーであり、専門は営業、プレゼンテーション、コミュニケーションスタイルと多岐にわたる。2023年9月より一般社団法人生成AI活用普及協会の協議員に就任。
今日は、6つの法人営業・新規営業にまつわる質問を用意した(新規営業には、新規顧客開拓/既存顧客別門への新規営業/既存顧客への新商品営業も含む)。回答の情報源は、当社が営業支援25年間の歴史の中で育んだメソッド/購買者1000名に調査した顧客の「されたい営業」の調査結果/セレブリックス営業総合研究所の調査データ、である。
・新規顧客開拓のプッシュ(アウトバウンド)営業は必要か?
答えはYES。アウトバウンド営業は、商談の設定が営業側のアクションから生まれる。インバウンド営業は、商談の設定がお客様の反響・行動から生まれる。前者は後者に比べ5倍の労力がかかるといわれる。しかし、規模の拡大や全マーケット獲得を目指す/市場浸透率が低く需要喚起が必要/会いたい顧客にリーチできる/優位な条件で戦える、といった理由や特性から、プッシュ営業は必要である。
・新規営業の分析に有効なのは売れた理由or買わない理由
実際にはほとんど断られるので「買わない理由」に目を向けるべきだ。電話から入り新規のアポイントメントが取れるコールアポ率は2.25%。その先の商談で受注を獲得する商談受注率は18%であり、82%が新規商談では買われない。数が多くなる方に目を向ける方が効率的で、信憑性が高い/ひとつ対策できたときのインパクトが大きい/営業プロセスの先に来る、という利点もある。
そして、買わない理由は細分化できてはじめてその効力を持つ。「費用対効果が合わない」という理由も、費用の不満⇒他社と比べて高い/現在の方が安くできている/予算を捻出できない/これ以上お金を使えない……、と細分化して把握すべきだ。
・プッシュの新規営業においてソリューション営業を習得しても売れないのはなぜか?
顧客が商品導入の理由になる問題を認識していないからだ。新規商談には、(1)プロダクトアウトセールス(製品説明型)/(2)ソリューションセールス(課題解決型)/(3)コンサルティングセールス(インサイト主導型)がある。顧客が顕在的な悩みを抱えていない場合は、インサイトに基づく課題設定を行い顧客の代弁者として理想の未来に導いていく(3)の問題発見型が有用で、営業パーソンによって成果に大きな差が出る。
無自覚・無意識にある、潜在的な真の欲求をどのように手繰り寄せるのか。インサイトを掴まないと売れないが、実はインサイトは表面的に聞いても出てこない。コンサルティングセールスにおいては、ヒアリングではなく事実を掴むファクトファインディングを行いたい。鵜呑みにせず問題提起・挑戦し、問い・傾聴・示唆・訴求・教育・啓蒙を手段とし、商品ではなく相手のビジネス全般を範囲としてあるべき姿に主導するのである。
・再現性のある営業活動を推進する方法
標準化されたセールスプロセスを設計し、それを細分化しモニタリングすることだ。営業担当者は、事前準備⇒関係構築⇒課題設定⇒要件定義⇒企画作成⇒提案⇒後押しまでの過程(コンサルティングセールスプロセスTM)において、買わない理由が発生するのを未然に防ぎ、買わない理由が出たときには都度解消を目指すべきである。
商談の行程やプロセスによって、営業の仕方・手法は異なる。セールスプロセスは共感と合意で連鎖する。(4)の要件定義とネクスト設定=どんな提案だったら導入して貰えるかを明確にし提案の方向性がマッチしているか言質を得るまで(下地作り)が、成否を大きく左右することに留意されたい。
・望まれる営業スタイルはどれ?
コミュニケーションスタイルは人によって異なる。顧客のコミュニケーションスタイルに合わせ、どんな営業をするのかを考えてほしい。ただし、買おうと思っていない顧客の態度変容には「主導」要素が必要だ。
・営業活動のデジタルシフトは必要か
必要になる。労働人口の減少により、少ない人数でのパフォーマンス向上が求められる。優秀・若手層の働く意識、入社と離脱にもヒットする。顧客体験と営業体験=お客様がされたい営業と営業パーソンがしたい営業、そのギャップを無くして顧客体験を良くするためにもデジタルシフトは必要だ。
2024年3月25日(月) 会場対面・オンラインLIVE配信のハイブリッド開催
source : 文藝春秋 メディア事業局