中国のAI戦略に、民主主義国家は対処できるのか
いまやあらゆるところでAIが使われています。とりわけChatGPTは学校の風景を変えました。小学校の夏休みの宿題の定番である読書感想文は姿を消しました。子どもたちがChatGPTに作文を依頼すれば、小学生らしい文章を書いてくれるのですから、宿題の意味がありません。新学期になってから教室で書かせることでズルをさせないようにしている学校もあります。
大学も学生にレポートを課題として出そうものなら、多くの学生が同じような文章を書いてきてしまいます。かくして教育現場ではAI対策が急務なのですが、現実世界は、もっと深刻です。
「AIは全世界の安全保障と力関係を変えつつある」のです。AIを使用した無人の戦闘機は、人間のパイロットでは耐えられないような飛行方法で空中戦を戦うことが可能です。自律型の戦闘ロボットであれば、情け容赦なく敵を攻撃し続けます。
この分野で急激に力をつけているのが中国です。「中国は2006年にAI関連の論文発表数でアメリカを追い抜き、2017年にヨーロッパを追い抜いた」のです。
アメリカでは、IT企業が自律型戦闘ロボットの研究開発に携わることに反対する社員も現れますが、中国では、そのような“障害”はありません。文字通り官民挙げて研究を続けています。しかも「千人計画」といって、優秀なAI研究者を世界中から高給で集めています。中国は、この研究成果を使い、中国国内では顔認識ソフトを組み込んだ監視カメラで国民を監視しています。
そのようなAIの使い方に対し、民主主義国家は、どう対処すればいいのか。この本の著者はアメリカ陸軍のレインジャー部隊の隊員としてイラクとアフガニスタンに出動し、多くの兵士が素朴な手製爆弾によって犠牲になっていく戦場を経験しました。その経験を経て国防総省で自律型兵器に関する法的・倫理的側面について研究してきました。
その成果として、中国のAIを使った軍拡に対抗するためには4つの戦場で成果を上げなければならないと提唱しています。その一つは、重要な戦略資源となった「データ」をどれだけ蓄積できるか。二つ目はAIの計算能力を高める半導体をどれだけ確保できるか。三つ目は、AIを駆使できる人材をどれだけ育成し、囲い込むことができるか。そして四つ目は、AIを軍事ばかりでなく、あらゆる組織で有効に活用できる機構をどう整備していくかです。
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source : 文藝春秋 2024年10月号