メリーさん伝説を解きほぐす
横浜近郊で育った者にとって、真白い洋装で街角に立っていたメリーさんは何かしら語りたくなる存在である。6歳で都内から鎌倉に越した私もまた、1990年ごろ伊勢佐木町付近で彼女の姿を見かけたことがあり、少なからずその経験を人に話してきたと思う。彼女をモチーフにした作品は舞台から歌謡曲、映画まで数多くあり、ローカルな存在でありながら知名度は全国区でもある。戦後の混乱の中で外国人を相手にする娼婦となった、恋人だった将校を今も待っている、など少し漠然とした、悲しく美しい物語とともに。
本書はそんなメリーさんについて、その実際の半生と彼女に纏わる伝説の双方からアプローチした壮大なメリー論だ。前半では主に彼女と関わりのあった人や彼女の故郷、行きつけの店などを実際に著者が足を使って取材し、今まで空白の多かった彼女の人生と足取りを追う。それは半ば伝説と化した彼女を今一度人間としてとらえ直す作業であり、その中で彼女が娼婦になった経緯や横浜の繁華街での様子、横浜にいる理由など、必ずしも語られている物語と一致するものではない生身の姿が浮き上がってくる。
有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。
記事もオンライン番組もすべて見放題
初月300円で今すぐ新規登録!
初回登録は初月300円
月額プラン
1ヶ月更新
1,200円/月
初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。
年額プラン
10,800円一括払い・1年更新
900円/月
1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き
有料会員になると…
日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!
- 最新記事が発売前に読める
- 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
- 編集長による記事解説ニュースレターを配信
- 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
- 電子版オリジナル記事が読める
source : 文藝春秋 2024年10月号