電通の4代目社長として、日本の広告業界発展の礎を築いた吉田秀雄(1903〜1963)。10代目社長を務めた俣木盾夫氏が見た“広告の鬼”の素顔とは――。
あの独特のしわがれ声は、今でも私の耳に残っています。
「謙譲、礼儀、親切」
世間で“広告の鬼”とも呼ばれた吉田秀雄さんは、時に社員を叱咤激励したこともあったせいか、厳しい人間と思われがちですが、むしろ逆。思慮深い、気遣いのある方でした。
私がその人柄に触れたのは、昭和37(1962)年の入社間もない頃。大阪赴任の内示が出る予定だったところ、吉田さんの「東京でいいじゃないか」という計らいで、本社勤務となったと人事部から聞かされました。当時、私の両親は仕事の関係でブラジルに住んでいましたが、その頃、海外からの手紙は一度、東京を経由してから各地に配送されることを吉田さんは知っていた。だから、「1日でも早く親御さんからの手紙を息子に届けたほうがいい」と、東京に残してくれたそうなのです。
広告人としては何より“先を見る力”と“構想力”に長けている方でした。かつて広告業は、新聞や雑誌の広告の仲介業としての役割が大半で、料金の規定も無かった。悪徳業者も蔓延(はびこ)り、会社や商店の入口に「押し売りと広告屋はお断り」の張り紙をするところがあったほど。
そんななか、吉田さんは戦時中に広告料金の適正化を推進。戦後は「広告は平和産業になる」と訴えた。広告が日本の産業や経済の発展に繋がると、未来を見据えていたわけです。
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