作家の有吉佐和子(1931〜1984)は、『紀ノ川』『華岡青洲の妻』『恍惚の人』『複合汚染』など、歴史から社会問題まで幅広い分野でベストセラーを連発した。
女優の草笛光子氏(91)は、原作者と出演者という垣根を越え、プライベートでも親しく交わった。
女性のドロドロした部分をえぐり出すのが、お上手な作家でしたね。親しくなったきっかけは、有吉さんの『不信のとき』という小説がテレビドラマになって、私が主演したことです(1968年・日本テレビ)。翌年に芸術座で舞台化された際にも、ドラマ版に続いて小林桂樹さんと夫婦役で出演しました。
忘れられないのは、やはり有吉さん原作の『和宮様御留』という舞台です。幕末に皇室から徳川家へ嫁いだ皇女和宮の替え玉に仕立てられる少女が竹下景子さんで、私はお付き女官の少進という役でした。この役と、『女たちの忠臣蔵』(作・橋田壽賀子)で演じた大石内蔵助の妻・りくの演技が認められて1980年度の菊田一夫演劇賞をいただいたことは、いい思い出です。
プライベートでは何度もお食事に行きましたし、麻雀友達でもありました。私が一時ゴルフにはまったのも、有吉さんが誘ってくださったおかげです。お友達というより、私が腰巾着みたいに、二つ年上の彼女にくっついていたのです。イヤになっちゃうくらい、懐かしい。
有吉さんがお若い頃、舞踊家の吾妻徳穂さんの秘書をなさっていたのも不思議なご縁でした。徳穂先生は、私の師匠でもあったからです。
NHKのテレビドラマ『セカンドバージン』(2010年)で女流作家を演じたとき、役作りの上で有吉さんを参考にしました。キリッとした彼女に似せて横長の眼鏡をかけ、髪を短くしてみたのです。
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