陛下はお酒、雅子さまは生き物が大好き。ご出産秘話から御所の中の私生活まで……新天皇・皇后おふたりに接した人々が素顔を明かす。
昭和58年から宮内庁御用掛を務め、皇后様と初めてお会いしたのは平成5年のご結婚の少し前。「お妃教育」として、1週間ほど集中的に和歌の講義を受けていただき、ご結婚後も月1度1時間ほどご進講を申し上げていました。歌は初めてなので、とおっしゃいましたがとても御熱心で時折鋭い質問を挟みながら私の話をお聞き下さいました。
最初は別々にご進講をとおっしゃっていた天皇陛下も、皇后様とご一緒においでになることが多くなりました。東宮御所の階段をお二人が手を取り合って、若々しい軽やかさで下りてこられたこともあります。「いいなあ。やはりこうしたお立場でも新婚のご夫婦らしい時間がなくては」と微笑ましく思ったものです。皇后様の表情は輝いておられました。
皇后様にとって初めての歌会始のお題は「波」。お詠みになったのは、新婚わずか2カ月後に陛下と訪問された滋賀県での思い出でした。
君と見る波しづかなる琵琶の湖(うみ)さやけき月は水面(みのも)おし照る
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source : 文藝春秋 2019年11月号