各界で活躍する“達人”たちが、人生を変えた「座右の書」を紹介する連載。達人たちはどのような本を読み、どのような影響を受けてきたのか、その半生とともに振り返る――。第7回は、東大在学中に歌手デビューし、「百万本のバラ」「知床旅情」などのヒット曲で知られる歌手の加藤登紀子さんが登場。
(取材・構成 稲泉連)

加藤登紀子(かとう・ときこ)
1943年、満州国ハルビン市生まれ、京都育ち。1962年、東京都立駒場高等学校卒業。1968年、東京大学文学部西洋史学科卒業。1972年、全学連の活動家の藤本敏夫と獄中結婚。東京大学在学中の1965年、「第2回日本アマチュアシャンソンコンクール」に優勝し歌手デビュー。以後、80枚以上のアルバムと多くのヒット曲を世に送り出す。年末恒例の日本酒を飲みながら歌う「ほろ酔いコンサート」は50年以上も続く。宮崎駿監督のスタジオジブリ・アニメ映画『紅の豚』(1992年)では声優としてマダム・ジーナ役を演じる。藤本敏夫(2002年死去)との間に3人の子がおり、孫は7人。次女Yaeは歌手。著作も多数あり、最新著は『「さ・か・さ」の学校――マイナスをプラスに変える20のヒント』(時事通信社)。2025年6月22日(日)にはNHKホールで、デビュー60周年記念コンサート「加藤登紀子 80億の祈り」を開催予定。
1962年に東京大学に入るまで、私は伝記を読むのが好きなくらいで、あまり文学にのめり込むタイプではなかったわね。でも、大学生だった20歳の頃、最初に恋をした人があまりにいっぱい本を読んでいる人で、すっかり影響を受けたの。「ああ……」とため息をつきたくなるくらい、本を読むようになったのは、あの頃からね。
当時の読書として、まず胸に甦ってくるのは太宰治と中原中也です。
歌手になる前の私は、大学の演劇研究会で活動していました。高校(東京都立駒場高校)にいたとき、大島渚監督の映画「日本の夜と霧」を舞台劇にしていたのを見て、東大の演劇研に憧れを抱いていたのね。それに、私は何かを表現したかった。演劇研には後に劇作家として活躍するような錚々たるメンバーがいたし、やる気の出なかった受験勉強も「演劇研に入りたいから」と、自分を叱咤激励して頑張ったという感じだったんですよ。
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