9月に公表された“分かりにくい発生確率”
甚大な被害が想定される「南海トラフ地震」の発生確率が2025年9月に見直された。それまで「30年以内に80%」とされていた確率が、「20~50%、または60~90%程度以上」に改訂された。
2つの確率が示された上に、その確率の幅もあまりに広い。「これでは『何もわからない』と言っているのと同じではないか」と思った読者も多いだろう。実は、この“分かりにくい発生確率”が公表されたのは、私の著書『南海トラフ地震の真実』(東京新聞)がきっかけの一つだった。
なぜ、このような形で確率が発表されたのか。本稿では、今回の発表に至った経緯から、地震予測の現状の問題点、さらには、今後も予測が必要かどうかまで解説していきたい。
そもそも、改訂のきっかけは、2013年に遡る。
この年、南海トラフ地震の発生確率の「2013年評価」として、「30年以内に80%」との数値が公表された(13年の公表当時は60~70%。確率は時間の経過とともに上昇するため、本稿では便宜上25年9月時点の確率80%と表記)。
しかし、私が取材を進めると、この確率は公表前の検討段階で科学者から「待った」がかかっていた“疑惑の確率”だったことが分かった。
地震の確率は、文科省が管轄する「地震調査研究推進本部」(以下、地震本部)の傘下で、地震学者で構成される「地震調査委員会」が発表している。同じく地震本部傘下で、防災の専門家や行政担当者らで作る「政策委員会」との合同部会で、この地震確率を算出する「予測モデル」について議論になっていたのだ。
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