ジョディ・ローゼン著 東辻賢治郎訳「自転車 人類を変えた発明の200年」

伊藤 亜紗 美学者・東京工業大学教授
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自転車の上にいる人ならではの思考のドライブ感

 自分の力だけで高速で進む。高度に情報化した現代において、自転車はどこまでも身体的だ。ペダルをこげば体がホカホカしてくるし、車と違って風を全身に感じることができる。渋滞にも満員電車にも煩わされずに都会の高いビルの合間を疾走したかと思えば、農村のでこぼこ道も涼しい顔、重い荷物もへっちゃらだ。自転車が与えてくれるのは、強烈な自由の感覚と気分の高揚である。

 実際、自転車はしばしば進歩的な価値観と結びつけられてきた。あるときそれは窮屈な衣類を脱ぎ捨てた「解放された女性」のシンボルとなり、またあるときは圧政や占領軍に対するレジスタンスを可能にする機動力の高い手段となり、さらに現代では大気を汚す自動車文化に対抗する環境保護の処方箋となっている。

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source : 文藝春秋 2025年6月号

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