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浪人中に、初めて談志師匠の古典落語を聴いた衝撃

松之丞 音楽って、ゼロからその人の世界を立ち上げる仕事だというのも大きいんでしょうね。岡村さんの世界は独創的ですし。

岡村 いろんなアーティストに影響は受けていますけどね。松之丞さんは、演芸の世界に興味をもったきっかけが談志師匠の落語だったんですよね。なのになぜ落語ではなく、講談だったんですか。

松之丞 大学に落ちて浪人中に初めて談志師匠の「らくだ」という古典落語を聴いた時に、これしかないっていう衝撃を受けて。こちらの若い感受性もあったと思うんですけど、帰りの道すがらずっと鳥肌が立ってました。それでいろいろと掘っていくと、談志師匠は講談も好きで、講談を噺に取り入れていることもあり、その要素に僕は惹かれたんだなということがわかったんです。

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岡村 談志から入って、講談に行き着いたわけですね。

松之丞 講談っていまもそうなんですけど、過小評価されているんですよ。聴いてるのもおじいちゃんばっかりで。でも、待てよ。これって明治時代には全盛を極めたエンターテインメントだったというし、町内に一軒は講釈場があったという。もしこの世界に賭けて、変えてみせようという講談師が現れたらどうなるんだろうって。そういうプロデューサー的な視点というか、青臭いうぬぼれもありまして。まあ、若気の至りで、生意気なんですけどね。

岡村 いや、面白いですよ。高座見て発見だったのは、講談って二枚目の芸なんですね。

松之丞 僕自身はアレですけど、芸としては二の線ですね。

サイコパスのコンビニ店員のオファーが……

岡村 役者の仕事をやりませんかって言われたらどうします?

松之丞 興味ないですね。ポッと出のやつが出る、という行為があまり好きじゃないんです。もちろん役者でない人が素晴らしい芝居をするケースも知ってますけど。

岡村 むちゃくちゃ向いてると思いますけどね。

松之丞 岡村さんは役者をやられたことは?

岡村 何回かは。ぜんぜん向いてなかったけど(笑)。

松之丞 でも岡村さんのライブ映像を見てると、立っているだけで完全に場を掌握してるじゃないですか。あれ、すごく考えてやってらっしゃいますよね。ああいう能力は、役者でも生きそうですけど。

岡村 基本的にどのエンタメでも役者の要素はあるでしょうね。何かの役になったり、憑依したり。なんで松之丞さんにそれを聞いたかと言うと、役者のオファーがくるだろうなと思ったんですよ。

松之丞 1回ありました。「松之丞さんにピッタリの役が」って言われて、サイコパスのコンビニ店員の役でした(笑)。たしかにあってそうだし、出てもいいかなと思ったんですけど、スケジュールが合わなかった。

岡村 それは見てみたかったですね(笑)。