今年の箱根駅伝出場ランナーの中で、高校時代に一番遅かった選手は誰なのか――。
そんな疑問がふっと浮かんだのは、年始の箱根で初優勝を果たした東海大が「黄金世代」という言葉とともにメディアに取り上げられていたからだ。
ぶっちぎりで記録を持たない選手がひとり
館澤亨次、阪口竜平、鬼塚翔太といった東海大の現3年生は、高校時代からインターハイや高校駅伝で実績を残してきた有名選手たちだ。高校生長距離ランナーの目安となる5000mのタイムも、抜群の記録を持って入学してきている。
一方で、そんなエリートランナーとは対照的に、箱根駅伝を走る選手には高校時代の実績はなくとも、そこから這い上がってきた選手も多くいる。そんな中で、今大会で一番大学時代に伸びた選手は何者なのか――そこに興味が湧いたのだ。
そんな思いで各ランナーたちの高校時代の5000mの記録を調べてみると、やはりほとんどの選手がエリートランナーの証でもある14分台のタイムを持っていた。
だがそんな中で、ぶっちぎりで記録を持たない選手がひとり。関東学生連合チームの8区を走った鈴木悠太(平成国際大・4年)だ。
今大会で区間7位相当の快走を見せた
高校時代のベストタイムは、15分46秒。
遅い。群を抜いて、遅い。
出場ランナーの中で高校時代にもっとも速いタイムを持つ早大の中谷雄飛(13分47秒)と比べると、その差は実に2分。記録だけで見れば、トラックレースなら優に2周近い差をつけられることになる。
そんな高校時代の記録にも関わらず、今大会で鈴木は8区で区間7位相当の快走を見せた。チームの順位も押し上げる力走は、タイムだけでなく勝負強さも感じさせる走りだった。
高校時代に全国大会で実績を持つランナーの中にも、箱根駅伝という大舞台を走れずに終わる選手は星の数ほどいる。そんな中で、“雑草”鈴木がこれほどの成長を見せられた理由はどこにあったのだろうか。