1ページ目から読む
2/5ページ目

高見叡王の棋風は「妖術」と呼ばれることがある

 一方、この日の高見叡王の夕食はクラブハウスサンドとフライドポテト。山盛りのポテトが気になるが、中終盤は安定を取って挑みたいところだろうか。

 局面は高見勝勢で進んでいる。夕食休憩も明け、いよいよ勝負は終盤へ。

 しかし、対局結果は135手で永瀬七段の勝利となった。時間に追われる中、勝負を決めきれず逆転を許してしまったのだ。

ADVERTISEMENT

 高見叡王の棋風は時に「妖術」と呼ばれることがある。終盤、難しい局面で時間に追われる中繰り出す勝負手で相手を惑わし逆転する、勝負師の棋風である。前回の第3期叡王戦では強敵相手にその妖術が炸裂し、とうとうタイトル獲得にまで至った。まさに高見叡王の「武器」であった。

 しかし第1局、本来高見叡王の武器である逆転劇を、永瀬七段の「負けない将棋」によって許してしまったのだ。もしかしたら永瀬七段の棋風に、いや、食事注文の「妖術」にかかってしまったのかもしれない。

 第1局から盤上盤外ともに面白い展開を見せた叡王戦。この日の対局内容は、そのまま最終局まで強く影響していくことになる。

高見叡王の注文がすごいことになっていた

 第2局は北海道斜里郡斜里町「北こぶし知床ホテル&リゾート」。

 北海道の食事はどれも新鮮な食材がキラキラと宝石のように輝き、見ただけで脳が「美味しい」と疼きだすようなものが多い。「食事が美味しい都道府県」と聞かれて「北海道」と答える人は少なくないだろう。しかし、本局ではその輝きとは違う火花が盤外でバチバチと散っていた。

第2局は、知床の自然に囲まれた会場で行われた ©iStock.com

 前回とんでもない注文をした永瀬七段は、昼は「うに丼御膳」、夜は「道産和牛のステーキ御膳」と、思わずほっと胸を撫でおろす普通の注文であった。

 しかし、一方の高見叡王の注文がすごいことになっていた。昼は「鮭といくら親子丼」と「牛かつ御膳」の2種、夜は「海鮮丼とざるそば」のセットと「たらばがにすき鍋と握りずし膳」の2種、計4種を注文した。前局の永瀬七段への対抗意識もあったのだろうか? 将棋では二手指しは反則だが、食事の注文では反則にならない。とはいえ対局を支える重要なガソリンだ。それがどう影響するだろうか。

 おやつの量も万全だ。少し多いかもしれないが、多い分には調節が効く。前局の悔しい思いをここで払拭できるか?