睡眠薬・抗不安薬を飲みすぎている人は少なくない
薬の過度な使用は、無駄な医療費を増やすだけではない。
たとえば、抗生物質の使いすぎは、抗生物質の効かない「薬剤耐性菌」を生み、国立国際医療研究センター病院の推計によれば、「薬剤耐性菌」によって国内で8000人以上(2017年)が死亡している。
また、朝日新聞(12月8日付)の調査によれば、「のみ続けると転倒や骨折、認知機能の低下を招きやすいとして、高齢者はできるだけ使用を控えるべきだとされている睡眠薬や抗不安薬が65歳以上に多く処方され、ピークは80代だった」という。これは、高齢者ほど「(整形外科、精神科、内科など)別々の診療所から同じタイプの睡眠薬・抗不安薬を処方されて必要以上の量をのんでいる人が少なくない」からだ。
「偽薬」は、こうした「薬の飲みすぎ問題」の解決に大きく寄与する。
不確かで捉えどころのない「健康」という概念
しかし、水口氏の考える「偽薬」の使命はそれに留まらない。
「誰しもが『健康』でありたいと願っています。しかし『健康』とは何でしょうか。科学の進歩により、『健康』を客観的な対象として捉えることができるようになったと一般には思われていますが、実はそうではないのです。
科学では『病気でない状態』といった否定的な表現でしか『健康』を定義できないのです。つまり、科学において『健康』は、不確かで捉えどころのない虚構的な概念なのです。
こうした『健康観』に無自覚なまま囚われて、『健康』を求めるとどうなるか。それは、『健康』の終わりなき追求となります。絶対に充足されることはないからです。これが『健康病』です。とくに高齢者を中心に生じています。
〈プラセボ製薬〉の究極的な役割は、ここにあるのではと考えています。『偽薬』が、『健康病』を生み出すようなこうした『健康観』を揺るがす可能性を秘めているということです」
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水口氏の「元製薬会社員の僕が『偽薬』を売る理由」の全文は、「文藝春秋」1月号および「文藝春秋 電子版」に掲載されている。
元製薬会社員の僕が「偽薬」を売る理由