文春オンライン

ソレイマニ暗殺の米国ドローン「超ハイテク攻撃」の衝撃 21世紀の戦争はこう変わる

2020/01/22

source : 週刊文春デジタル

genre : ニュース, 社会, 政治, 国際, サイエンス, テクノロジー, 歴史

note

中国製無人機「彩虹5」の実力は?

 こうした無人兵器の活躍は、今後さらに広がりを見せることになろう。米軍は海上監視から空中給油に至る幅広い任務で無人機の実用化に踏み出しており、2030年代以降には有人の戦闘機が無人戦闘機と連携して戦う「ロイヤル・ウイングマン(忠実な僚機)」構想を実現させる計画である。

 欧州、ロシア、中国といった世界の主要国も、無人兵器開発に本腰を入れつつある。特に中国はリーパーと同クラスの「彩虹5(CH-5)」無人機(各種のセンサーや武器を搭載し、48から60時間の滞空が可能とされるが、正確な性能は明らかにされていない)等を実用化して輸出までしている。

 また、将来を見据えて「スウォーム」技術の開発でも米国としのぎを削っている。ごく小型の無人機を数百機連携させて群(スウォーム)のように振る舞わせ、敵の防空システムを無効化してしまうという技術であり、実用化すれば新しい無人機戦闘の形態が出現することになろう。

ADVERTISEMENT

ロシアのウラン-9 ©getty

 無人の新兵器開発はドローン以外でも進んでいる。陸軍国であるロシアは地上で戦う無人戦闘車両の開発に熱心で、その一部(小型戦車のようなキャタピラ式の戦闘ロボット「ウラン-9」等)はすでにシリアでの実戦にも投入された。さらに米中露は水中を長時間航行できる無人潜航艇計画を進めており、今後、無人兵器はありとあらゆる戦場に姿を現すことになりそうだ。

 ただ、その運用は意外と難しい。無人兵器といっても、現在は人間が遠くから操作する遠隔操縦(リモコン)兵器であり、相応の数のオペレーターや強力な通信回線、整備要員など多種多様のインフラを必要とする。そして遠隔操縦である以上、一旦電波が途切れると無人兵器は全く役に立たない。また、各国が人工衛星に対する攻撃・妨害技術の開発を進めていることを考えると、無人兵器のコントロールに使われる衛星通信回線やGPSも有事にはアテにならない可能性が高い。

 実際、前述したロシア軍の戦闘ロボットは、弾詰まりが起きても直せない、市街地では操縦電波が途切れて行動不能になる、など、シリアの戦場で多くの困難に直面した。ロボット兵器が人間と完全に置き換わるには、まだもう少し時間がかかると見るのが現実的であろう。