杉井敦/戦略・安全保障研究家。1989年福岡県生まれ。防衛大学校卒業。2013年、防衛省・自衛隊を退職。著書に『防衛大学校で、戦争と安全保障をどう学んだか』(星野了俊との共著)。

 一九四五年六月、第二次世界大戦の戦勝国(連合国)が署名した国際連合憲章は、すべての加盟国に対し、武力による威嚇または武力の行使を禁じています。

 現在、例外として実質的に許される武力行使は、個別的または集団的自衛権の行使と、国連の軍事的強制措置だけです。

 第二次世界大戦以前は、基本的には相手国に対して最後通牒を通告するか、もしくは宣戦布告をした上で戦時に移行するという手順を踏んで、戦争が始められていました(実際には、宣戦布告なしの戦争も数多くあります)。日本の真珠湾攻撃が問題とされるのは、アメリカ政府への最後通牒の通告が遅れ、結果的に宣戦布告が正式に行われる前に攻撃を仕掛けた形となってしまったためです。

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 しかし、第二次世界大戦後は、たとえ宣戦布告を行おうが最後通牒を通告しようが、侵略行為はすべて国際法上違法であるとされています。

星野了俊/戦略・安全保障研究家。1988年埼玉県生まれ。防衛大学校卒業。2013年、防衛省・自衛隊を退職。著書に『防衛大学校で、戦争と安全保障をどう学んだか』(杉井敦との共著)。

 とはいえ、もし仮にどこかの国が有無を言わさず侵攻してきた場合、これに抵抗しなければ多くの国民の命が犠牲になり、領土が奪われ、最悪の場合国家が消滅してしまいます。そこで、武力攻撃を受けた国連加盟国は自衛権を行使し、戦時に移行することとなります。この場合、国連安全保障理事会にその旨を報告する義務が発生しますが、たとえ相手国に宣戦布告し、国連安保理への報告義務を果たしたとしても、それが自動的に正当な行為であると認定されるわけではありません。開戦事由の正当性や戦争犯罪については別途、国際戦犯法廷や国際司法裁判所などで司法判断が行われることとなります。