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「ヘミングウェイの名文」を通して英文法を学ぶ本がヒットした理由

『ヘミングウェイで学ぶ英文法』(倉林秀男・河田英介 著)――ベストセラー解剖

2020/03/13
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『ヘミングウェイで学ぶ英文法』(倉林秀男・河田英介 著)アスク出版

 ノーベル文学賞作家アーネスト・ヘミングウェイの作品が、形容詞や副詞の少ないシンプルな文体にもかかわらず、豊かな情感を呼び覚ますのは、英文法上の工夫があるからだという。そこに着目した英文法の学習書が、シリーズ第1弾・第2弾を合わせて7万部を超すヒットに。著者は英語学・英語文体論の専門家・倉林氏と米文学の専門家・河田氏。版元も語学学習書に定評のある出版社だ。

「工夫したのはレイアウトです。通常は解説や和訳を英文と同じ見開きに掲載しますが、そうすると情報量が少なくなってしまう。この本ではまず和訳、次に英文を掲載し、そのあとに著者たちが好きなだけ解説をする方式にしました。そんなこともあり、300ページ以上ある厚めの本ですが、掲載されている英文(原文)は初学者でも読み切れる分量です。およそ40ページ分くらいでしょうか」(担当編集者の森田修さん)

 定番を避けた少々マニアックな収録作のセレクトが、世間に潜むヘミングウェイ好きの琴線に触れたのもヒットの要因。とはいえ、主眼はあくまで英文法だ。

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「特にうれしかった反響は、『大学時代の楽しかった文学講読の授業を思い出した』という、90歳の女性からのものでした。こうした文学や文法を学ぶことの楽しさを伝えるのが、正しい英語教育ではないでしょうか」(森田さん)

2019年5月発売。初版3000部。現在7刷5万部

ヘミングウェイで学ぶ英文法

倉林秀男 ,河田英介

アスク

2019年5月30日 発売

「ヘミングウェイの名文」を通して英文法を学ぶ本がヒットした理由

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