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2020/03/19

海老澤 民法の「不法行為」(民法709条)に基づいて損害賠償請求などをすることになります。この場合、会社に対しても使用者責任(民法715条)を追及することも可能です。より悪質で同意なく性行為に及んだというケースですと、強制わいせつや強制性交など刑法上の責任も問題になってきます。

 民事訴訟を起こす場合は、セクハラにより心理的にショックを受けて治療が必要となった、休業せざるを得なくなった、退職を余儀なくされた……そういうことに対して損害の補填を求めるケースが多いです。金額はケースバイケースですが、セクハラが原因で休業しなければならなくなったり、退職にまで追い込まれてしまったようなケースでは、慰謝料のほか休業損害や逸失利益の支払いまで認められることもありますので、高額になりますね。

なぜファッション業界ではセクハラ・パワハラがなくならない?

――海老澤先生は弁護士になる前、ファッションエディター(編集者)として活躍された異色の経歴でファッション業界に精通されています。今回の一件を受けて、「アパレル業界の膿を出すいい機会」とツイートされていますね。

海老澤 残念ながら、ファッション業界はセクハラやパワハラがまだまだ多いと言わざるを得ません。根本的な構造として、アパレルでは男性が経営層にいて、その下に多数の女性がいるという会社が多いです。もちろん日本では他業界でも女性管理職の割合が低いことが指摘されています(※2018年のILO調査で12%)。ただこの業界では販売員など若くてオシャレな女性がより集まりやすい。その環境において、もしも認識の甘い男性がいた場合、今回のような問題が起きやすいのではないでしょうか。

 ファッション業界では長時間労働の常態化も少なくありません。そもそも経営陣が雇用者の時間管理もできていないというケースもたびたび見てきました。デザイナー、パタンナー、バックオフィスのスタッフなどで、タイムカードがないケースすらあります。ファッション業界では、年に2回、S/S(春夏)とA/W(秋冬)という大きなコレクションシーズンがありますが、その期間になると「夜中まで作業を繰り返して、毎晩徹夜して……」というのが当たり前のことも多く、会社が時間管理しきれずに本人任せにしているケースがまだまだあるのです。そうした状況では、今回のように上司から部下に対するセクハラがあったとしても、部下へのケアが不十分で会社が事件を把握できていないというケースは少なくないと思います。

ネット通販新会社を立ち上げ記念撮影する石川康晴社長(当時、2018年2月撮影)©共同通信社

この一件でTwitterでは「不買運動」も

――そんな「ファッション業界の膿を出す」ために必要なことは何でしょうか?