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「アベノマスク」に見る、不人気だけど必要な緊急対策についての是非

2020/04/17
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治療を受けられず長椅子で寝てる救急患者

 マスク不足と言えば、検査や研究で慌ただしくしている家内も、また、都内の医療機関に応援に出ている友人たちも、マスクをしないでやってくる、高熱が数日続いて困っているコロナ感染疑いの人対策に難渋していると言います。

 私も親族が病院に担ぎ込まれて救急外来にいったところ、たくさんの感染疑いの人たちが救急待合でゴホゴホやって体調悪そうにしているわけですよ、マスクもしないままで。体調悪くて出かけられないんだから、朝から薬局の前で並ばないと買えないマスクなんて持ってなくて当然なんですよね。

 言いかたは悪いけど、救急外来までたどり着いたのに治療を受けられず窓口の前の長椅子で寝てたりする。また、本稿でも救急搬送された親族の話も書きましたし、報道でもありましたけど、都内でも感染疑いの患者さんが急増したこともあって、救急車が来てくれても受け入れる病院が見つからなくて一時間以上立ち往生する例も珍しくなくなっている、というのが現実です。

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※写真はイメージです ©iStock.com

「あれは他の会社の予算だから」

 本来は、そういう布マスクを全世帯に配るぐらいなら、やっぱり医療機関に感染疑いの人たち向けに「せめてこれをして、感染しているかもしれないコロナウイルスを他の人に広げないでください」と渡すほうが、圧倒的に感染症対策になるんじゃないかと思うんですよね。経済産業省が予算をつけて生産量がアップした分のマスクは、どうか医療機関や、具合が悪くて診察や救急にきたマスクのない人に配ってあげて欲しいと思います。

 そういう話を、厚生労働省の人にチラッとしてみたところ「経済産業省も対策に協力してくださっていることは、とても感謝してます」という前置きはしながらも、突っ込んで話を聞くと「あれは他の会社(省庁のこと。経産省? 内閣官房?)の予算だから」と、ズバッと縦割り、牛島組長のフォークボールのような落差で現実論が襲い掛かってくるわけであります。