史上最高と言われる2019年のM-1。なぜあれほどの“神回”になったのか。出場した漫才師の連続インタビューでその答えに迫っていく。

「かぶってるなら俺が避ければいい」「もう誰かのせいにするのはやめにしよう」……“ノリツッコまないボケ”で、大逆転劇を演じたぺこぱ。なかでも「キャラ芸人になるしかなかったんだ!」は初見なのになぜかグッときた。M-1のネタについて深掘りしていく。(全4回の3回目/#1#2#4へ)

ぺこぱのシュウペイ(左、ボケ担当)と松陰寺太勇(ツッコミ担当)

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M-1スタッフの知られざる「プロの仕事」

――ぺこぱの漫才は非常に動きが大きいですけれど、マイクが音を拾ってくれないのではという不安はないのですか。

松陰寺 マイクを離れても、フットマイクがあるし、ガンマイクも追いかけてくれていたので。

――それなら、安心ですか。

松陰寺 ただ、「右だって言ってんのに、なんで3回も左に曲がると……右になってる」っていうところで、僕が完全に後ろを向いてしまうシーンがあるんです。そこは、どうしてもマイクで拾ってもらえなくて。予選でも、そこだけ声が聞こえなくなったりしてたんです。なので、決勝はあのシーンは削ろうかとも思ったんですけど、ウケるところなのでもったいないな、と。でもオンエアを見たら、ちゃんと聞こえてて。僕が後ろを向いた瞬間、ミキサーの人が音を上げてくれたんじゃないですかね。僕らのネタを知っててくれて「向くぞ、向くぞ、今だ」って。

――だとしたら、プロの仕事ですね。

松陰寺 勘違いかもしれませんけど、心なしか、後ろ向いたときだけノイズの音も大きくなってる気がするんですよね。

10番目に登場し「タクシー運転手」のネタを披露した ©M-1グランプリ事務局

「キャラ芸人にしかなるしかなかったんだ!」はなぜウケたのか

――ぺこぱのネタは、おもしろいだけでなく、どこか哀愁が漂っていますよね。シュウペイさんに「うるせー、キャラ芸人!」って言われて、松陰寺さんが「キャラ芸人になるしかなかったんだ!」って叫ぶところ、なぜかグッとくるんですよ。お笑いにはマイナスかもしれませんが、苦労してきたんだなって。涙笑いになりかける。

松陰寺 それ、よく言われます。哀愁出そうなんて、微塵も思ってないんですけど。

 

――オードリーの若林正恭さんがラジオで2人のネタを聞いてて泣きそうになったと話していましたが、なんかわかります。