たくさんの人が降りた「潮見駅」……どこへ行くのか?
すると、意外にもずいぶんたくさんの人が降りるのだ。そしてホーム上には電車を待っている人の姿も多い。どうやら、この潮見という駅はナゾでもなんでもなく、ずいぶん利用する人がいるようだ。調べてみると、2018年度の1日あたりの乗車人員は13,565人。東京の駅にしては少ないといえば少ないが、それでも京葉線の駅では葛西臨海公園駅や新習志野駅とほぼ同じだ。平日の日中、会社員らしき人の姿も多いし、駅の周りには何があるのか。
高架下の改札口を抜けて駅の外に出てみた。西口側には立派なロータリーがあって、客待ちのタクシーが何台か止まっている。その横にはスーパーマーケットのマルエツが鎮座。コンビニやチェーン店もいくつかあるし、その前を行き交う人も多い。駅のすぐとなりに立派なマンションも建っている。月島などと同じように臨海部の住宅地なのだろうか……。
ところが、駅の周りを少し歩くと必ずしもそうではなさそうである。駅前には「東京プリンティングシティ」と書かれた看板が掲げられていて、小さな印刷工場がいくつも軒を連ねている。その周囲にも運河に面して造船所があったりして、ちょっとした“工場の町“になっているのだ。駅で見かけた会社員たちは、これらの工場の関係者なのだろう。立派なマンションもあるにはあるが、むしろこの潮見の駅前の個性を決定づけているのはこうした工場たち。
潮見駅がある埋立地はもともとは“8号埋立地”といい、1960年代に完成したものだ。潮見という地名が与えられたのは1968年になってから。前後して住民の入居もはじまっている。以降、工場なども立ち並ぶようになり、企業の進出も進んで発展。1990年に京葉線潮見駅が開業すると、マンションが次々に建設されて他の埋立地同様の“臨海部の住宅地”へと変わっていった……というのが、潮見の表向きの歴史である。
じつは、潮見には前史というべきものがある。