なんとこの越中島、京葉線の全駅の中でも利用者数は二俣新町駅に次いで“下から”2番目。2018年度の1日あたりの乗車人員はたったの5,735人である。東京区部のJR駅では最も利用者数が少ないとか。果たしてどのような駅なのだろうか。
京葉線の越中島駅は地下にある。ホームからは階段を登って外に出るというどこにでもある地下駅の構造だ。地下に越中島駅がある地上の通りは両サイドが緑豊か。東京海洋大学のキャンパスだ。東京海洋大学は、もともと東京商船大学といい、1882年に設立された東京商船学校にルーツを持つ伝統校。越中島駅は、この大学のキャンパスの最寄り駅なのである。ということは、1日の乗車人員約5,700人のほとんどがこの大学の学生なのだろうか……。
江戸時代に“完成”した越中島 なぜ利用者が少ない?
潮見駅のある一帯は戦後に完成した埋立地だった。越中島も“島”から想像できる通り埋立地だ。ただ潮見と大きく違うのはその歴史。越中島の埋立が完成したのはなんと江戸時代の1710年代。完成後は幕府の御家人屋敷となったという。埋立以前は隅田川河口のデルタ地帯で、榊原越中守の屋敷があったことから「越中島」と呼ばれるようになった。埋立で土地が広がってからもその名が継承される。幕末にはフランス軍人による洋式調練が行われ、近代になってからも軍の練兵場があった。そうした公的施設のひとつが、東京海洋大学につながる東京商船学校だったというわけだ。
と、越中島は潮見と比べると歴史と伝統のある埋立地ということになる。にもかかわらず、どうして利用者数が少ないのだろう。その答えは、駅の周囲を歩いてすぐに見つかった。
越中島駅のすぐ東には清澄通りが通っており、清澄通りを右に曲がれば10分程度で地下鉄の門前仲町駅。左に折れて相生橋を渡ればその先はもんじゃとタワーマンションでおなじみの月島で、越中島駅から徒歩15分で月島駅に着く。どちらも古くから多くの人が暮らしている。近年の発展も目覚ましい代表的な“下町”。
そもそも京葉線は、他の鉄道路線が通っていないところを走るから価値が高い。ディズニーランドの舞浜駅はまさにそうで、他にアクセスする鉄道がないからお客の輸送をほぼ独占することができる。ただ、他の路線と競合するととたんに弱くなるのだ。