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「低コストのおいしいビジネス」都市開発の裏で暗躍する“砂マフィア”の実態

『砂戦争 知られざる資源争奪戦』より

2020/11/10

genre : 読書, 社会, 国際

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数百人規模の武装マフィアも

 砂マフィアといっても千差万別だ。なかには数百人規模の武装した大がかりな組織もある。浚渫(しゅんせつ)機械を備えた船から吸引ポンプで砂を川底などから吸い上げ、あるいはパワーショベルやブルドーザーで川岸の砂を集めて、自前のダンプカーで運搬する。大手の建設会社と組み、取り締まりの司法当局や監督機関を抱き込んで、堂々と違法行為をすることも多い。

 一方で、夜の闇にまぎれて何人かで採掘禁止の川に潜り、素手で砂を集め荷車で運んで建設業者に売るような零細マフィアもいる。人気のない奥地を狙って採掘するので、発展途上地域では監視や取り締まりがむずかしい。運び出してしまえば、産地の特定はまず不可能だ。

都市化の進むインド

 マフィアがもっとも根を張っているインドの実情から見てみよう。国連の人口統計によると、インドの人口は、2019年には13億6641万人だったのが、30年には15億364万人、50年には16億3917万人まで増えると予測される。中国は2019年時点では14億3378万人と世界最多の人口を抱えるが、30年代に入ると人口は減少に転じて2027年ごろにはインドに抜かれることになる。

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 20世紀の前半まで、インドの人口の9割までは農村に住んで、家も泥と草ぶきが多かった。ところが、国連の「世界都市人口予測2018年版」によると、都市人口は2018年には4億6100万人で、中国の8億3700万人に次いで多い。都市化率は34%に達した。農村と都市の極端な地域格差から、今後も都市への人口流入がつづくことは確実だ。2050年までには都市人口は倍増するとみられる。

 人口1000万人以上の「メガ都市」は、2018年現在、世界の20カ国で33ある。インドにはムンバイ、デリー、コルカタの3都市がある。中国の6都市に次いで多い。2030年までにはアフマダーバードとハイデラバードもメガ都市入りをする。

 かつて独立運動の拠点にもなったムンバイは、2018年には1980万人だった人口が、30年には2457万人に膨れ上がると国連は予測する。もともとは7つの島からできていた街だったが、現在では埋め立てられてひとつにつながり昔のボンベイ島は南に張り出す半島に変わった。