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ホークス・工藤公康監督が明かした“反省”に学んだこと

文春野球コラム クライマックスシリーズ2020

2020/11/17

 皆さん、工藤監督についてどんな印象をお持ちでしょうか? 私は正直、工藤監督についてテレビやニュースでみえる部分しか知りませんでした。ホークスに所属されていた1995年~1999年のことも、小さくて記憶にありません。そのため、選手としての印象は、強いライオンズで活躍された、弱かったホークスを支えた、長く現役を続けられた、カーブが特徴的だという程度。監督としては、投手目線での采配、短期決戦に強い、選手と仲が良さそうなど、表面上のことしか理解していませんでした。

 そこでもっと工藤監督について知りたいと思い、講談社から出版されています工藤監督の著書『55歳の自己改革』を読ませていただきました。結果として工藤監督やホークスに対して大きく印象が変わることになりました。特に印象的な部分を抜粋してご紹介したいと思います。

工藤公康監督 ©文藝春秋

「僕は変わりたいと本気で思っている」

 まず最初に驚いたことは反省という言葉が多く使われていたことです。6章構成で最初の第1章のタイトルが「反省」なのです。この章の中では2018年のチームを振り返りながら、次のような衝撃的な言葉が出てきます。

「僕がチームを邪魔していた部分がたくさんあった」
「コーチ陣とのあいだに距離を感じた」
「毎日のように怒っていた時期があった」

 確かに2018年は西武ライオンズから首位を奪うことができずに2位で終わってしまった不完全燃焼なシーズンでした。実際にチーム内でこんなことが起こっていたなんて知りませんでした。

 そして次のような言葉が続きます。

「僕は変わりたいと本気で思っている」

 選手としての実績や、野球に関する知識、優勝の経験が豊富にも関わらず、自分自身の非を認め、反省して、良くなろうと努力されている工藤監督の姿がありました。私には想像もできない程のプレッシャーの中で、それまで自分が良いと思っていることを変えることは本当に難しいと思います。本の中でも書かれていますが、監督は自分自身だけでなく、他の多くの人の人生を背負うことになります。そんな中で勇気をもって一歩踏み出された工藤監督は本当に尊敬できると思いました。

一方的から双方向へ コミュニケーションの変化

 工藤監督が反省の後にされたことはコミュニケーション方法を考え直したことです。これまで一方的だったコミュニケーションから双方向のコミュニケーションへ変えたそうです。その中でも素敵だなと思ったエピソードは選手との食事会です。ガムを禁止していた工藤監督が選手の意見を聞いて解禁されました。自分のポリシーに反していてもチームがまとまるために選手の意見を尊重してOKを出したそうです。

 他にもコーチのみんなと意見を出し合ってから方針を決めるようにしたことによって、甲斐選手を積極的に起用したことで甲斐キャノンが生まれたこと、短期決戦における第2先発という起用法が生まれたことを知りました。

 テレビでも大きく注目されたことが、裏で工藤監督の考え方の変化やコーチの皆さんの熱意から生まれたことを知り、改めてコミュニケーションの大切さや相手の気持ちに立つことの重要性を実感しました。私の書道家としての活動も多くの人に支えられています。工藤監督を見習って、謙虚に周りに感謝を忘れずにコミュニケーションをしていきたいと思いました。

 他にも監督としての苦悩や勝つために心がけていること、選手たちへの思いや、選手の意識を変えて強いチームをつくるためにやっていること、健康な身体をつくるために実施していることなど全てをご紹介することはできませんが、たくさん学べることがありました。どんな人でも参考になることがある本になっています。なんと言っても素晴らしい成績を残された方のリアルな経験なのです。興味がある方はぜひ読んでみてください。